金子晴お・くもいすすむ「一匹伝・創刊号」(200円)



 収録作品

・金子晴お「半裂き」
「椎名競太郎は、武州摩多羅嶽に住む富賀白竜のもとに向かう。
 富賀白竜は天下一の剣聖であり、競太郎の父は椎名玄斎の弟子であった。
 競太郎は富賀白竜のもとで厳しい修行に励む。
 富賀白竜には一つ変わったところがあり、それは沼の主である、巨大な山椒魚を唯一の友としていたことであった。
 毎朝、彼は、兎の干し肉を山椒魚にやるため、沼を訪れる。
 数年が経ち、競太郎の修行半ばにして、富賀白竜が急病で倒れる。
 彼は、競太郎に山椒魚を世話を託し、息を引き取る。
 その際、白竜は、山椒魚に生肉および生きた動物を与えないよう警告する。
 競太郎は修行を続けるかたわら、山椒魚に毎日餌をやり、山椒魚も彼になつく。
 そんなある日、家の使用人の爺が競太郎のところにやって来る。
 爺は、彼の父親が、邪剣使いの鞍馬三兄弟に決闘を挑まれ、破れたと競太郎に知らせる。
 更に、高弟達も皆殺られ、家の道場では鞍馬道場の看板を掲げていると聞き、競太郎は平静ではいられない。
 しかし、今の腕ではとても鞍馬三兄弟には勝ち目は皆無。
 そこで、競太郎は一計を案ずる…」
 「生肉を食べさすな」って、なんか「グレムリン」を連想しました。
 ラストはほろ苦いですが、人間なんてそんなものだよね。

・くもいすすむ(aka 橋本将次)「執念一刀」
「江戸の千葉周作のもとで二年間、剣の修行をして、故郷に帰る途中の片岡幻三郎。
 彼が山越えをしている時、急熱に襲われ、山小屋に助けを求める。
 山小屋の父娘は幻三郎を介抱するが、父親は彼の財布に目を付け、娘が薬を取りに行っている間に、幻三郎を殺そうとする。
 だが、殺意を察した幻三郎により父親は返り討ち。
 その場から逃げ去る幻三郎を娘は追い、父親の仇を取ろうとするが、彼女も父親と同じ運命を辿る。
 故郷の飛騨高山に帰った幻三郎は、その優れた腕を認められ、藩道場の師範代に任命される。
 その一月後、師範役を勤める、彼の父が松山藩に出向くことになり、幻三郎に藩道場が任される。
 そして、昼間は、藩士の稽古、夜は、お忍びで露姫の稽古をつけることとなる。
 露姫は日ましに剣に鋭さが増し、幻三郎はそら恐ろしいものを感じるのだが…」
 どう見ても、幻三郎は正当防衛で逆恨みもいいところなので、後味のいい話ではありません。
 あと、露姫様は、牡丹(バラ?)柄の袴に、柄付きの足袋という稽古着で、なかなかオシャレです。

・金子晴お「忍法くノ一変化」
「敵の忍者に、機密書類ばかりか、将軍家の世継ぎまでも人質に取られたしまった服部半蔵。
 敵の忍者は、東に二里離れた峡谷で、人質を放す代わりに、そこまでは手出しをしないよう条件を出す。
 仕方なしに条件を飲むが、服部一門の名にかけて、機密書類も人質も取り返せねばならない。
 その時、蟹八が役目を買って出るが、彼の忍術とは…?」
 そんな忍術、ありかよ〜って感じですが、まあ、「忍者マンガ」なんで、何でもありなんです。
 荒唐無稽な内容でも、金子晴お先生のすっきりした絵柄で、読ませます。

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり。糸綴じの穴あり。シミ・汚れ・裂け、多し。pp34・35、下方のコマ、ページ同士がくっついて、剥げた痕あり、また、p35の下隅、コマにかかる欠損。最終ページの上部、欠損あり。貸出票の剥がし痕あり。裏表紙に「懐古館ろびん」の貼紙あり(潰れたんでしょうか?)。

2017年8月19日 執筆・ページ作成

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