まつざきあけみ「秘密の花園」(1999年9月6日第1刷発行)

 収録作品

・「秘密の花園」(1999年「恐怖まんが666」1月号増刊掲載)
「望奈(もな)は才色兼備の少女で、転入して二か月でクラスの人気者。
 テニスの初心者なのに既にキャプテンの秋穂先輩と肩を並べ、彼氏は学校で一番人気の高い直樹であった。
 だが、その裏で、彼女のライバルやいじめた人物が次々と事故にあったり、怪我をする。
 疑いは彼女に向けられ、更に、それが根拠のない噂を生み、望奈は疑心暗鬼に陥る。
 遂には、親友のアキや直樹にも見放され、孤立無援になった時、望奈は誰かに命を狙われていることを知る。
 ある時、秋穂先輩にキーホルダーを捜して欲しいと頼まれるが、望奈は、今まで出来事は秋穂先輩の仕業ではないかと考える。
 彼女は秋穂先輩から逃げ出し、追われるが、同じクラスのおとなしい男子、阿南が彼女を屋敷に匿ってくれる。
 彼は、両親を亡くし、大金持ちの祖母と広大な屋敷で二人暮らしをしていた。
 今まで人々の冷たい視線にさらされてきた望奈は、彼の優しさに安らぎを見出す。
 彼は彼女を地下にある花園へと案内するのだが…」

・「私を憎む目」(1998年「恐怖まんが666」9月号増刊掲載)
「演劇部の梨奈は、演劇コンクールでの「ハムレット」のオフェーリア役に抜擢される。
 梨奈はそれを喜ぶ一方、姉、満流(みちる)への負い目もあった。
 満流は演劇が大好きで、女優を目指していたが、去年の夏、交通事故で全身麻痺となる。
 身体は全く動かせず、目の動きでわずかに意思表示ができる程度であった。
 梨奈は、オフェーリア役について満流に話すが、満流が憎しみに満ちた眼差しで睨んでいるように感じる。
 また、梨奈の周囲では、嫌がらせのような奇怪な出来事が次々と起こる。
 梨奈は、満流が彼女に嫉妬していると考えるのだが…」

・「私を赦して!」(1998年「恐怖まんが666」5月号増刊掲載)
「神谷真穂は才色兼備、かつ、誰に対しても優しい、皆の人気者。
 だが、彼女には人には言えない過去があった。
 小学一年生の時、彼女は率先して、ブスな女児をいじめ、それが徐々にエスカレートする。
 遂にある日、彼女は女児の顔に石を投げつけ、女児は川に転落、命はとりとめたものの、重傷で入院することとなる。
 女児の入院中、真穂は引っ越しで町を去り、以来、そのことが心のしこりとなっていた。
 そんな時、小川奈美という女子生徒が転入してくる。
 一目見て、真穂はあの時の女児と直感するが、相手は彼女を見ても、何も思い出さない様子。
 彼女は物心ついてから、ずっといじめられてきたため、いじめられても、すぐ忘れるようにしていた。
 でも、どうやら真穂のことが記憶の片隅にはあるらしい。
 彼女が過去のいじめを思い出したら困るため、真穂は彼女と友達になり、ことあるごとにかばう。
 しかし、奈美と関わっているせいで、彼氏や友人達とどんどん距離ができてしまい…」

・「幸福の家」(1998年「恐怖まんが666」1月号増刊掲載)
「萌の一家(両親、萌、弟の和樹)は抽選に当たり、立派な家に移ることになる。
 その家は「幸福の家」と呼ばれており、借りた家族は皆、幸福になると言われていた。
 実際、その家に住み始めると、とても幸せな気分になり、この家に「ふさわしく」なろうと考えるようになる。
 そして、家族は皆、その家に「ふさわしく」、豊かに、素敵になっていく。
 だが、萌の部屋の鏡が壊れた時、「ふさわしく」なる一方で、失われるものが大きいことに気付き…」

・「妹がこわい」(1997年「恐怖まんが666」10月号増刊掲載)
「岩手県遠野への旅行の帰り、礼奈の一家は路上で女の赤ん坊を見つける。
 赤ん坊の身元はわからず、一家は引取り、咲と名付ける。
 だが、去年、家が火事になった際のショックで、咲は醜くなり、口もきけなくなる。
 礼奈はそんな咲が気持ち悪くて仕方がない。
 しかも、火事以来、礼奈の一家は不運続きで、これに咲が絡んでいるのではないかと考える。
 また、この付近では、女子生徒の通り魔殺人が連続して起こっていた…」

 「私を憎む目」と「幸福の家」は非常によくできた作品だと思います。
 個人的なベストは「私を憎む目」で、もの悲しいラストは絶品だと思うのですが、登場人物の鼻が尖りまくっているのが感動に水を差すかも…。
 いじめを題材にした「私を赦して!」も内容的にはいいですが、いじめられっ子の描写があんまりで、ちょっとね…。
 「妹がこわい」に出てくるは、渡千枝先生の名作「鈴蘭は血の匂い」とタメを張る不気味さです。(でも、ハートウォーミングな結末で、その落差がまた…。)

2021年8月4日 ページ作成・執筆

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