菅本順一「血と蝶」(220円/1966年頃?)
・「第一話 血と蝶」
冬の夕方、京子はバイオリンの稽古の帰りに、怪しい男に尾行される。
更に、その夜、京子の姉の雪子が自室で襲われる。
雪子の身体には季節外れの蝶が群がり、怪しい男が部屋にいたが、京子の目の前で消えてしまう。
雪子は病院に運ばれ、生命に別条はないものの、貧血のために衰弱していた。
雪子の首には赤い蝶のアザがあることを医師から知らされると、父親は顔色を変える。
考古学者である父親は、戦争中、東南アジアにあるメラチン国にて、王の墓の財宝の発掘に参加していた。
メラチン国には王家の墓を荒らすものは「蝶の呪い」があると言われていたが、隊長は墓を守る重臣一家を皆殺しにする。
しかし、屋敷の崩壊や病気等によって、発掘に参加した者は、父親以外、皆死んでしまったのであった。
二十年の時を経て、復讐のために「蝶の呪い」が蘇えったのであろうか…?」
・「第二話 夢・夢・夢」
「雪子も回復した頃、京子のもとに、山形の親戚、久子からの手紙が届く。
手紙の内容は、スキー場ができたので遊びに来ないか、という誘いであった。
京子は冬休みになったら、雪子と共に、久子を訪ねる旨、返信を書く。
ただ、休み間はスキーのシーズン真っ盛りなので、姉の提言で、二人は電車ではなく、バスで行くことに決める。
しかし、山形に行くことを決めてから、京子は悪夢を幾度と見るようになる。
悪夢の中で、自動車に轢かれて、四肢がバラバラになったり、崖から突き落とされたり、機関銃で蜂の巣にされたりする。
しかも、夢の中で京子を殺すのは、同じ男であった。
この男の正体は…?」
・「第三話 鏡の中の猫」
山形の久子のもとを訪れた、京子と雪子。
最初の夜、二人はいつも自分達が泊まる部屋で、血まみれの女性の幽霊を見る。
女性の幽霊は「おゆるし下さい つい手がすべってしまい」と途切れ途切れに言うと、姿を消してしまった。
翌朝、二人は久子に部屋を変えるようお願いすると、それを耳にした久子の父親が激昂、あの部屋は使ってはいけないと怒鳴る。
久子の説明によると、彫刻家である父親は作品を壊されてから、ノイローゼ気味だとのこと。
とりあえずは、別の部屋をあてがわれることとなるが、突如、久子の母親の悲鳴が聞こえる。
声のした居間に京子達が駆けつけると、母親は食器を落としただけと言うが、どうも様子がおかしい。
その時に、雪子は居間の大鏡にべっとりと血がついているのを目撃するのだが…」
読んだ印象では、浜慎二先生の影響が大きいように思います。(第三話に出てくる猫なんて、そっくりのような気がします。)
「ミステリーゾーン」のように、起承転結がはっきりして、無駄のない、こじんまりとしたストーリーは、貸本マンガには(意外と)珍しいかも…。
ただし、絵を見てもわかるように、新人漫画家の手によるもので、まだこなれているとは言えません。
でも、ご安心あれ。
そこは「残酷描写でカバー」という、私の大好きなパターンなのであります。
画像で載せておりますが、容赦のかけらもないところが素晴らしい!!
基本的に緊張感の欠けた絵なのに、残酷描写になると、一気にテンションが上がりまくるという、ハーシェル・ゴードン・ルイスの映画のようなマンガです。(多分…。)
ちなみに、表紙絵は鈴原研一郎先生だと思います。
・備考
ビニールカバー貼り付け。貸出票の剥がし痕あり。
2016年9月19日 ページ作成・執筆