西たけろう「猫女」(220円)

「いつかわからぬ時、どこともわからない場所。
 一人の女性が、雪が降りしきる中を歩いていく。女性の名は未知子。
 未知子は、木の下で泣いている少女、みどりに出会う。
 みどりは三つ目であり、住んでいたところから追い出されたのだと言う。
 未知子は、探している人がいるので、少女の住んでいたところへ案内してくれるよう頼む。
 太陽が死んだ地上は暗闇と雪に覆われ、地下に暖かい世界であった。
 未知子はみどりの額の目を木の枝で突き刺し、それを手当てしてから、少女を抱いて、人体移動機で地下の世界に向かう。
 人工太陽に照らされた地下都市は一見平和そうに見えるが、急激な人口増加と作物の不作が問題になっていた。
 地下都市の市長はまだ少年であったが、配給制の食堂で出会った未知子を違う「種族」だと一目で見抜く。
 その場から急いで立ち去る未知子だが、表には深い霧が立ち込めていた。
 霧の中には、食い殺された幾つもの死体と、巨大な猫の姿があった。
 それは猫男と言われ、幻のように現れては、彼らの同胞を幾人も殺害する、恐ろしい敵であった。
 未知子と猫男には何らかの係わりがあるようなのだが…」

 かなり面白いのですが、どうやって内容を説明したらいいものやら途方に暮れてしまう、異色作です。
 当時としては、かなり高度なSF的知識を駆使して、「SFスリラー」の名に恥じないものです。
 ただ、ストーリーがあまりに奇想天外で、「SFスリラー」の範疇を軽く飛び越えております。
 もしも原作らしいものなしで、ここまでのものが描けたのだとすると、西たけろう先生が乗りに乗っていた時期だったのかもしれません。
 個人的に、隅々まで味わえる、大好きな作品であります。
 んにしても、「猫女」を「ねこをんな」読ませるのは何故…?

 めでたいことに、まんだらけ発行の「怪奇貸本奇談シリーズ」の一冊として、「緑色の雪が降る」とのカップリングで復刻されました。
 なかなか渋いチョイスです。(もっと出して下され〜。)

・備考
 ビニールカバーの剥げ痕あり。pp62〜66、目立つシミあり。pp99・100、汚れあり。小口底に、マジックによる線引きあり。

2015年10月3日 ページ作成・執筆
2017年10月9日 加筆訂正

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