西たけろう「緑色の雪が降る」(220円)
「登山中に遭難した梨花と鏡子は、運よく山小屋を見つける。
山の天気は荒れ、二人はそこで一夜を過ごすこととなる。
夜中、鏡子は機械の音が聞こえると突如、言い出す。
梨花には何も聞こえないにもかかわらず、鏡子はそのまま外に出て、「緑色の雪が降っているのよ」の言葉を最後に、忽然と姿を消す。
死体は発見されず、行方不明のまま、二年経った頃、鏡子が突然に家に帰ってきたと梨花は知らされる。
鏡子が無事だったことを喜び、一刻も早く会おうと願うが、鏡子は精神病院に入れられていた。
それでも、会ってみようと、梨花は鏡子と面会する。
二年ぶりに会う鏡子はやつれ果て、目に怪しい光をたたえていた。
そこで、鏡子は梨花に話す。誰も信じてくれようとしない話を…。
鏡子はあの山小屋の外で、緑色の雪を見た直後、深い穴のようなところに落ちる。
気が付くと、狭い球体の機械の中にいた。
その機械の中でどれだけ時間が過ぎたか…鏡子は機械だらけの部屋で目を覚ます。
リップと名乗る女性に導かれ、地球の統治者ロミーという人物と会う。
ロミーが言うには、ここは70万年後の未来だと言う。
そして、人間は今のところ、ロミーとリップしかいないのだった。
と言うのも、ある惑星人との戦争の際、一部の司令官を除いて、他の地球人は皆、地下で眠りに就いたのだが、その司令官が戦死したため、眠りについている地球人を目覚めさせる方法がなくなってしまったのであった。
彼らを目覚めさせるには、未来人(ミュータント)としての特殊な能力が必要とされる。
その能力の持ち主を捜すうちに、鏡子にその能力が備わっていることがわかり、過去からタイムマシンで連れてきたのであった。
鏡子は、ロミーとリップから、地下の人々を眠りから覚ますよう依頼されるのだが…」
時代を考えますと、SFホラーの佳作であります。
マニアックなネタをがんがん盛り込むアグレッシブさは西先生の魅力の一つですが、勇み足と思えるところもありまして、それも味のうち。
マンガというものが発展途上であったが故に、描くことができたし、描くことも許されたのだと思います。
ちなみに、ラストはバッド・エンド。なかなか後味悪いです。
めでたいことに、まんだらけ発行の「怪奇貸本奇談シリーズ」の一冊として、「緑色の雪が降る」とのカップリングで復刻されました。
なかなか渋いチョイスです。(もっと出して下され〜。)
・備考
カバー欠。巻末にテープの剥げ痕二か所あり。
2015年10月29日 ページ作成・執筆
2017年10月9日 加筆訂正
2020年7月29日 加筆訂正