左馬一平「血風月姫峠」(220円)

「時は戦国。
 小豪族が割拠し、血で血を洗う争いを続ける飛騨の地。
 その地で最も実力を誇ったのは、菩提寺坂の城主、江崎幸盛であった。
 しかし、実際は、江崎幸盛は単なる女狂いであり、合戦の最中も愛人と乳繰り合うバカ殿。
 城を並み居る敵から守り抜いていたのは、戦に長けた武将、人呼んで「鬼の隼人」であった。
 数年後、隼人の活躍のおかげで、平和な時期が訪れるが、合戦に生きる武骨者の隼人には物足りず、欲求不満に陥る。
 苛立ちを紛らわすために、馬で遠乗りをしている時、隼人は由加という女性と出会う。
 由加は隼人に殿を暗殺して、次期領主になるように唆す。
 その言葉により野心を抱いた隼人はその夜、殿と愛人を首尾よく暗殺。
 江崎幸盛には子がなく、家臣の中から次期領主が選ばれることとなるが、家臣の平手道三に殿暗殺の証拠を握られ、直前のところで領主の座を奪われてしまう。
 平手道三は善政を敷き、家臣や領民の心を掴んでいく一方で、平和な時には、隼人のような戦好きは人々の支持を失っていく。
 遂には、平手によって、隼人が過去に滅ぼした城、佐久間城にとばされるのであった。
 荒れた日々を送る隼人であったが、馬で遠乗りをしている時に山中で落馬、迷ってしまう。
 砦を捜して、さまよううちに、温泉があり、そこに裸の由加が隼人を見つめていた。
 しかし、マムシに噛まれて、驚いた次の瞬間には、由加の姿はなかった。
 隼人はその付近の村々で由加という女性を捜すが、隼人の捜す女性はどこにもいない。
 ただ、隼人によって滅ぼされた佐久間城の姫が由加と名であった。
 隼人が再び温泉に行くと、由加が再び姿を現す。
 その身体は生身の身体であり、隼人は由加を抱く。
 以降、隼人は由加の身体に溺れ、毎夜出かけるようになるが、徐々に生気を抜かれたように衰弱していく。
 由加の正体や如何に…?」

 貸本マンガにて大胆な性描写を盛り込んだ(のか…?)漫画家の一人である左馬一平先生(注1)。
 性描写があったところで、マンガとしての価値がちっとも上がらないのが、悲しいところなのですが、それでも、内容はまあまあ面白い部類に入ると思います。(貸本マンガの水準には達しているのではないでしょうか。もっとヒドいものはうなるほどあります。)
 基本的には、戦国の世に展開する異類恋愛譚なのですが、今回もアダルトなテイストが捩じ込まれておりまして、嬉しい限り。

 しかも、(ネタバレですが、)相手は「大蛇(おろち)」。


 う〜ん、力いっぱいまぐわっておりますが、エロいというより、ヘンかも…。
 印象としては、「アニメにほん昔ばなし」のオープニングにより近いかもしれませんね。
 と言うか、主人公に攻め滅ぼされた城主の姫が蛇性と化す説明が作品中に全くないことに今、気付きました。
 とにもかくにも、「蛇姦」をマンガというメディアで表現した、初のマンガかも…と言ったところで、やっぱり価値は上がらないのでありました。

・注1
 より詳しく知りたい人は、キクタヒロシ氏の「昭和のヤバい漫画」(彩図社/2016年2月15日第1刷発行)の「左馬一平/魔風幻影城」を参考にしてください。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。裏表紙の裏の下側の紙剥げ。

2016年5月11日 ページ作成・執筆

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