「オール怪談・15」(150円/1961年頃)



 収録作品

・いばら美喜「焦熱地獄」
「ある製鉄所。
 工員のアキラは同僚の安さんによって五千度の溶鉱炉の中に突き落とされる。
 アキラはギャング達の悪事を偶然知っており、ギャング達は安さんの娘の京子を誘拐して、アキラを殺すよう命令したのであった。
 だが、アキラは溶鉱炉の中で鉄の身体を手に入れ、甦る。
 銃弾は通用せず、アキラはギャング達を追いつめるのだが…」

・佐藤よしろう「生と死の境」
「ヤクザ者の健は、京子と出会ったことで、堅気になることを決意する。
 京子は、結核で亡くなった妹の和子とそっくりであった。
 黒田組とは縁を切ったものの、持病の結核が悪化し、彼は入院する。
 半年後のある夜、彼は幽体離脱をする。
 幽体となった彼が、一か月間、見舞いに来ない京子の様子を見に行くと、彼女は母親の看病をしていた。
 自分の命が長くないことを知り、彼は京子に何かしてやろうと考える。
 次の日の夜、彼は幽体となって、以前勤めていた暴力団に礼金をもらいに行くのだが…」



・清水良「白い壁」
「細見史郎の家は元・旗本の別邸で、両親と共に住んでいた。
 史郎は離れで暮らしていたが、ある日、庭で着物姿の娘を見る。
 少し目を離した隙に娘は姿を消すが、その夜、史郎の部屋に再び現れる。
 娘の名は汐路で、明治維新の頃の人間であった。
 彼女は佐幕派の武士達に追われ、白い壁の中に逃げれたらと思った時、白い壁の中に身体が吸い込まれてしまったのだという。
 しかし、後で壁から出ようとしても出られず、今日、ようやく壁から出ることができたのであった。
 彼女は史郎を許婚の竜之助と思い込み、史郎も彼女を愛するようになる。
 史郎の両親は部屋に引きこもる彼を心配し、史郎の友人の大助に相談するのだが…」

・サツキ貫太「夜霧の薔薇」
「19世紀半ば頃のイギリス。
 軍医のスタンフォードは軍医学校を首席で卒業しながらも、離れ小島に駐屯するカークウォール守備隊の中尉でしかなかった。
 彼はグレグスン軍曹の娘、メアリーと恋仲で、ある日、野生の薔薇が咲き乱れる花畑でデートをする。
 その時、メアリーは左目を蛇に噛まれてしまい、すぐに治療をするが、新しい薬が必要となる。
 その夜、船で薬と共に、総督の娘、アルシャが島に到着する。
 アルシャが婿を探しに来たことを知り、スタンフォードはメアリーを捨てることを決意。
 彼は彼女の治療をすっぽかし、その夜は酒場で酒を飲んで過ごす。
 翌朝、スタンフォードはメアリーを治療をするが、彼女の左目には醜い傷跡が残る。
 その日の晩、スタンフォードは舞踏会でアルシャと会い、とんとん拍子で出世するのだが…」

 どの作品も非常に味があって良いのですが、やはり、目玉はいばら美喜先生の大傑作「焦熱地獄」でしょう。
 菊地秀行先生による名アンソロジー「貸本怪奇まんが傑作選 妖の巻」(立風書房/1991年7月10日発行)にて復刻されておりますが、残念ながら、一ページ落丁ありの状態です…。
 いばら美喜先生の貸本時代の短編、まとめた単行本が出ないものでしょうか。

・備考
 カバー痛み。糸綴じあり。pp21〜24、大きな裂けがあり、テープ補修。pp100・101、食べかすが挟まり、剥げ。清水良作品の扉絵に鉛筆で書き込みあり。pp123・124、大きな裂け。前後の見返しに貸本店のスタンプあり。後ろの見返しに貸出票の剥がし痕と鉛筆での書き込みあり。

2022年12月7日 執筆・ページ作成

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