「オール怪談・39」(170円)



 収録作品

・いばら美喜「リュックの娘」
「夜、帰りの電車を待つ青年。
 そこへリュックサックを背負った娘が通りすがりに「私を殺して」と青年に言うと、そのまま歩み去る。
 このことが気になった青年は娘のあとをつける。
 娘はある寺へと入っていくが、青年はそこの住職に寺から出ていくよう命令される。
 このまま引き下がるわけにはいかず、物陰から窺っていると、人買いらしき男が現れ、住職から娘を買う手筈を整えていた。
 娘は激しく抵抗し、その場へ青年が踏み込む。
 娘のリュックの中身とは…?」
 ネタバレですが、いばら美喜版「バスケットケース」と、実はかなり無理があるのですが、あえて断言しちゃいます。
 日本で撮影されたアメリカ映画「双頭の殺人鬼」(未見/注1)が影響を与えているのかも。(注1)
 「オール怪談・80」にて再録されております。こちらは最後のページが一枚、省略されております。

・小島剛夕「月に背く者」
「戦乱の世。
 互いの不可侵を約するために、領主と領主が質子(ちし/人質)を交換するのが慣わしであった。
 ある城に敵方の城より、暗い宿命を背負った、依姫(よりひめ)という美しい姫が送られる。  人質櫓に監禁される身となった依姫は、地虫という、せむしの醜い老人の番人と、孤独な生活を送る。
 敵方からの人質として、極めて劣悪な環境に置かれる依姫だが、地虫はかえがえしく依姫の世話をする。
 地虫の真心が姫の心を温め、依姫は今まで人間扱いされたことのない地虫に美しい心情を見出す。
 ある夜、姫のもとに美しい櫓番の若衆が現わる。彼は夜の一刻だけ姫の相手をして、姫の寂しさ、哀しみを癒してくれる。
 彼には悲しい生い立ちがあり、父親は卑しい櫓番、母親は依姫と同じく人質で、その二人の真心が結ばれて産まれたのが彼だった。
 父母共に成敗され、青年はその生まれ故、ずっと櫓番をしていると話す。
 二人の逢瀬は毎夜続くが、ある日、敵側が城に攻撃を仕掛けてくる。
 和睦を図るために、依姫は返還されることとなるが、人質櫓を出ようとする時、若衆の正体を知る…」
 「オール怪談増刊」にて再録されております。粗筋紹介のカラーページをご覧になりたい方はそちらへどうぞ。
 また、菊地秀行氏・編「貸本怪談まんが傑作選 妖の巻」でも復刻された名作でもあります。
 美しい話です。泣けます。

・落合二郎&サツキ貫太「殺し屋には…」
「職工として、底辺の生活を送る哲。
 殺し屋として名を馳せた哲であったが、三年前、組から無断で脱け出し、職工に身を落としていた。
 彼の居場所を突き止めた殺し屋の健とジャガーの常は、哲を路地裏に連れ込み、始末しようとする。
 その前に、健は哲が何故組を勝手にぬけたのか、その理由を尋ねる。
 哲はその理由を話すが、それは彼の妻の死にまつわるものであった。
 彼の妻が出産した時、産まれたばかりの赤ん坊は以前に殺した男と同じ顔をしており、赤ん坊を見た妻は、ショック死してしまったのである。
 そして、哲は殺し屋という稼業の因果さを思い知らせれ、足を洗ったのであった。
 「殺し屋には皮肉な、そして、怖ろしい運命がまっている」と話す哲を、健と常は射殺。
 そのまま、逃げようとするが、運悪く、台風が襲来。
 暴風雨の中、車がダメになり、二人はガソリンを満載した車を奪い、逃走を図る。
 逃げ切ったと思ったのも束の間、水面が上昇したために、彼らは山の中で水に取り囲まれていた…」
 ヘンな話ですが、意外と面白いのです。
 このコンビの話をもっと読みたいな〜。

・古賀しんさく「憎悪」
「岩村和男は、裕福な外科医師の一人息子。
 一人息子故溺愛され、わがままし放題であったが、自ら起こした交通事故で失った右腕のことでひどく悩んでいた。
 ある日、和男の父親が和男に、特殊手術で片腕を両腕にしようと話す。
 特殊手術とは誰かの腕を和男に移植することで、火事で両足を失った、身寄りのない青年がその提供者になると言う。
 そんな時、和男の父親に老婆が面会を求めてくる。
 面会場所の波止場を訪れた、和男の父親は、産婆であった老婆から、ある秘密を聞かされる…」

・注1
「映画秘宝 あなたの知らない怪獣まる秘大百科」(洋泉社MOOK/1997年1月7日発行)のpp88・89を参照のこと。

・備考
 表紙貼り付け。ビニールカバー剥がし痕少しあり。背表紙色褪せ。糸綴じの穴あり。pp64(小島作品)、目立つ汚れあり。pp65・66(落合・サツキ作品)、タイトルページの中央に縦の折れ痕あり。小口の上部に数字の書き込みあり。

2016年8月15日 執筆・ページ作成

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