「オール怪談・46」(190円)
収録作品
・いばら美喜「人間複写」
「人間複写紙というものを使って、悪事を企む三人組の悪党。
この人間複写紙は、紙を似せたい相手の顔に押し当てて、型を取り、その型を別の人間の顔に押し付けると、型通りの顔になるという優れもの。
工場の給金を運ぶ運転手をさらい、その顔に似せて、なおかつアリバイつくりのため、それぞれの顔を入れ替えるが、意外な陥穽があった…」
・小島剛夕「女殺し油地獄」
「ある油屋の長男、与之吉は放蕩息子。
これには複雑な事情があり、父親は実の父親でなく、油屋の元・番頭で、与之吉の父親が亡くなる時に与之吉のことを頼まれたのだった。
それ故、番頭上がりの父親にとって、与之吉は「主」であり、強く出ることができない。
また、元・番頭の父親と与之吉の母親の間にできた弟が、与之吉が行末を誓った女性、お吉と結婚。
与之吉は転落の一途をたどる。
遂には、勘当され、借金を抱えた与之吉はお吉を頼るが…」
近松門左衛門「女殺油地獄」(享保六年(1721年)初演)ですが、原典にあたったわけでないので、こんな話なのかどうかは知りません。
どのみち、原典を読んだところで、歯が立たないと思いますが…。
「オール怪談・81」にて再録。
・古賀しんさく「人形の声」
「次の仕事を探していた詐欺師の男が、昔の友人と巡りあう。
この男は一人で葬儀屋をしているのだが、人手不足で大変だという。
詐欺師はこの男の力になり、葬儀屋の経営を一手に担うが、もちろん目的は男の財産だった。
葬儀屋の男は一人暮らしで、頭が弱く、貯金もかなりあるという、絶好のカモ。
が、男は一人暮らしのはずなのに、どこからともなく声がする。
しかも、その声は詐欺師の男を悪い奴呼ばわりし、警戒するよう呼びかけるのだった。
詐欺師は遂に声の主を突き止めるが、それは葬儀屋の男が操る、腹話術の人形。
葬儀屋の男は、一人の寂しさから腹話術の人形と会話するようになったと言うが、さて、声の正体は…?」
「S・F&怪談」(ひばり書房黒枠)にて再録。
・北風三平「俺は太陽が欲しいんだ」
「太平洋戦争末期。
東南アジアにて、日本軍は圧倒的な戦力のアメリカ軍に圧されて、撤退に次ぐ撤退を余儀なくされていた。
その撤退時、二等兵が二人、地下倉庫に待機するよう命令される。
入り口は念入りに塞がれ、二人は言葉通り、袋のネズミ。
そして、二人の任務は、地下倉庫のインペリット・ガス(毒ガス)が持ち運びができない為、アメリカ軍に見つかった時は、それを手榴弾で破壊するというものだった。
二人は上官の「作戦上の撤退で、一週間後に戻ってくる」という言葉を信じて待つが、アメリカ軍がやってくる…」
完全な戦争ものであって、怪奇的要素は皆無に近いです。
とは言うものの、相棒が落盤で死んだ後、地下倉庫からの脱出を図る主人公の姿はかなり悲惨。
描写や内容は今から見たら稚拙に過ぎないでしょうが、戦争の極限状況、戦争の理不尽さを描こうとした、その心意気や良し。
個人的に、この本の中で一番読み応えがあった作品です。
・備考
ビニカバ貼り付け。カバー痛み。糸綴じあり。全体的に、うっすらとだが、シミ多し。
平成26年11月9・10日 ページ作成・執筆