「オール怪談・47」(190円)



 収録作品

・浜慎二「鶏は可愛いペット」
「二年ぶりにシャバに出てきた、死体処理屋の松。
 彼は死体処理屋から足を洗い、今度は養鶏業を始めると言う。
 彼を昔逮捕した刑事は、松から食事を招待され、その際に、養鶏場を案内される。
 養鶏場はかなり広く、近代的で、鶏のエサを作るための大きな機械があった。
 ただ、そこでの作業員は松と聾唖者の男の二人だけ。
 松は刑事に真面目になったと話すが、どうも不信感が拭えない。
 そんなある日、上野で浮浪者の死体が転がっているという知らせが刑事のもとに入る。
 目撃者の証言によれば、トラックがバウンドした際に、荷台から転がり落ちたとのこと。
 刑事は松に疑惑の目を向けるが…」
 「豚と軍艦」(1961年/未見)にインスパイアされて描かれたのではないか、と推測しております。(注1)
 ネタばれとなりますが、鶏につつき殺される描写って、望月あきら先生が絵を担当した「カリュウド」にもありました。

・小島剛夕「女忍の館」
「関ヶ原の合戦の後、徳川家康の主だった諸侯が、夜ごと悪夢に悩まされるという奇妙な病気にかかる。
 柳生但馬は何者かの仕業か突き止めるべく、一門を方々へと遣わす。
 その中の一人、佐門次郎は、村人が噂する禁断の修道場を探し、霧深き、荒れ果てた山奥へと入る。
 霧で視界のきかぬ中、彼は足を滑らして、崖から転落。
 重い傷を負った彼を、おぼろという娘が見つけ、寺院へと彼を運ぶ。
 この寺院には女性ばかりが住み、唯一尼である禅尼の下、皆、尼仏上の厳しい修行が課せられていた。
 おぼろは禅尼より佐門次郎の手当てを命じられ、彼の世話を通じて、二人の間では愛情が育まれる。
 しかし、この寺院は、豊臣家に仕えていた女忍の館であり、禅尼は佐門次郎を、石田三成の霊にいけにえとして捧げようとしていた。
 おぼろと佐門次郎は共に館から逃げ出そうとするのだが…」

・古賀しんさく「奇妙な犯罪」
「ある金持ちの息子。
 父親は大金を持っているのに、自分の自由にならず、ある計画を思いつく。
 それは、芋虫嫌いの父親に、ちまちま芋虫を見せ、ノイローゼにするというものだった。
 癲癇(てんかん)持ちの、画家の友人の協力を得て、計画はとんとん拍子に進む。
 そして、最後の仕上げとして、画家の友人に、大きな袋に芋虫の模様を描いてもらう。
 彼の考えた、奇妙な犯罪とは…?」
 傑作です。(元ネタってあるんですかね?)
 ユーモアと奇妙さが交差する、こんな作品は古賀新一先生にしか絶対に描けません!!
 オチもばっちり効いていて、鮮やかです。

・北風三平「いい匂いの娘」
「秋のある日、自殺を図るために、山奥深くやって来た貧乏画家の青年。
 だが、彼が自殺しようとする度に、何やかや邪魔が入る。
 それは、いい匂いをまとった少女の仕業であった。
 再び生きる意欲を取り戻した青年は、山を下り、少女の面影を絵に描く。
 絵は展覧会で絶賛されるが、絵に描いた少女の像が次第に衰えていく。
 少女の正体とは…?」
 「おセンチ」な作品ですが、私は好きです。
 人によっては安直という意見もありそうですが、別にいいじゃない。
 絵やストーリーの完成度ばかりが尺度でなく、計算を超えたところに魅力がある作品だと私は思います。

・注1
 「動物を使って死体処理」という映画って、テッド・X・マイケルズのクソ・ホラー「人肉ミンチ」(1972年)や、「殺人豚」(1973年/未見)とあります。
 トビー・フーパーの凡庸な「悪魔の沼」(1976年)も入れるべきでしょうか。

・備考
 ビニールカバー剥がし痕ひどし。カバー貼り付け。糸綴じあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

2017年5月9日 ページ作成・執筆

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