「オール怪談・53」(1964年3月頃?/200円)



 収録作品

・小島剛夕「勝敗」
「年老い、豊前小倉に隠棲した宮本武蔵。
 海辺の洞窟で仏像を彫る毎日だが、海岸から流れる琵琶の音を聞き、盲目の法師を洞窟に招く。
 そして、その法師が語るは、舟島(巌流島)で果てた佐々木小次郎の奇しき(く・しき)恋の話。
 四十年も前、佐々木小次郎は日下無双(ひのしたむそう)の兵法者を目指し、全国を旅していた。
 京の洛北、蓮台野での宮本武蔵と吉岡清十郎との試合を見ようとしたが、一足遅く、試合は終わっていた。
 小次郎はそこで川に身投げしようとする女性を見つける。
 彼女を助けるが、その女性は吉岡清十郎の恋人で早苗という名だった。
 それが縁で、小次郎と早苗との仲は深まり、ある日、早苗が琵琶を弾いている時に小次郎は「つばめ返し」を編み出す。
 その「つばめ返し」を宮本武蔵との戦いに試すべき執念を燃やす小次郎に早苗が取った行動とは…」
 大傑作です!! 怪談シリーズの小島剛夕先生による作品の中で、トップ・クラスに位置する作品です。
 巌流島の決闘にまつわる話を、宮本武蔵の視点から、そして、小次郎の視点から描き、ストーリーに奥深さを出しております。
 そして、四十年後にようやく実現した二人の対決……勝敗の行方は…?
 復刻が望まれます。

・江波譲二「俺は刑事だぜ」
「主人公は悪徳刑事。
 麻薬の売人をわざと射殺し、正当防衛を偽装。持っていた麻薬や金もちゃっかり自分のものにする強欲ぶり。
 彼が奪った麻薬を奪い返そうと、暴力団は刑事を誘拐しようとするが…。」
 ちっとも怪奇マンガではありません。
 当時のよくあるハードボイルド・マンガってやつで、恐ろしく直球な展開ですが、それも味ということで…。

・サツキ貫太「悪魔の報酬」(1964年2月頃完成)
「売れない映画俳優。
 容貌がそっくりの双生児の弟は売れっ子で、嫉妬に身を焦がす。
 ある日、彼は自分が弟とそっくりなことを利用して、弟を殺し、自分がその身代わりになろうと計画する。
 弟を絞殺し、自殺を偽装するところまではうまくいったが、弟の恋人から呼び出され…」
 これも厳密には怪奇マンガとは言いがたいのですが、前述の江波譲二の作品よりはかなり捻っており、読み応えはあります。
 ただ、絵がビミョ〜でして…男のキャラはともかく、女性キャラが、う〜ん、ビミョ〜…。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。しみ、小破れ多し。

平成26年9月30日 ページ作成・執筆

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