「オール怪談・57」(1964年〜1965年/200円)



 収録作品

・鹿野はるお「廃屋の妻」
「許婚がいるにも関わらず、大問屋の娘、志ずと、江戸へ駆け落ちした相場重三郎。
 四年後、国元から二人の結婚を許すという手紙が来て、身重の志ずをひとまず置いて、重三郎は江戸に帰る。
 しかし、重三郎の父母に会うと、二人の仲を認めないばかりか、重三郎に外に出ないよう厳しく言い渡される。
 その上、重三郎の許婚だった、お絹も屋敷に住んでいた。
 解せないことばかりで重三郎が彼女に問うと、一度嫁と定まった女はその家に一生を捧げるのは武家の慣わし、そこで、重三郎の父母が亡くなった後も、位牌を守りながら暮らしていたとのことだった。
 現に、父母の位牌があり、ますます混乱する重三郎にお絹は幻でも見たんだろうと言う。
 そして、お絹の心情にほだされて、流されるままに、重三郎はお絹を抱くのだった。
 そのことがあってから、重三郎はお絹の怪しい魅力のため、江戸に志ずを迎えに帰る決心が鈍ってくる。
 重三郎は日に日に心身ともにやつれていくのだった…」
 どこかで聞いたような話を二つつなげておりますが、まあまあ、いいです。
 鹿野しげお先生は、小島剛夕先生と並び、貸本時代のひばり書房で時代劇を代表するマンガ家さんです。
 が、一部の愛好家を除き、今や、きれいさっぱり忘れられてしまいました。
 絵も達者な方で、女性キャラもまあまあ魅力があるように思います。ストーリーも台詞回しもそれなりに楽しめます。
 ネックは、妙な「クセ」のある絵なんでしょうね。
 この「クセ」を説明しようとすると…何と申しましょうか…「湿度の高い」絵なのであります。私にとっては、鬱陶しいというか、暑苦しいというか、梅雨の天候を連想させる絵であります。(あまり説明になっておりませんが…。)
「味」のある絵とは思いますが、夏がダメな体質故か、どうも受け付けません。(まあ、人の好みは十人十色なのであります。)
 ちなみに、鹿野はるお先生のマンガを見て、いつも気になるのは、女性キャラの襟首が思いっきり垂れ下がっている点です。
 実は、こっそり「お色気」を狙っていたとか…と下手な勘繰りをするぐらい、ずり下がっております。
 この作品では同衾描写が暗示されておりまして、かつ、「あなた!いつもの様に抱いてぇ」(p34)なんて刺激的なセリフも出てきます。
 う〜ん……「エロス」………ですか?

・小島剛夕「静こころなく」(注1)
「明治元年(1868年)四月十三日、沖田総司は江戸にて病死した。
 しかし、その日には沖田総司ととある女性とが儚い縁を結んだ日でもあった。
 五年前の江戸の四月十二日、妙は夫婦柳のもとにある、おもかげ橋にてにわか雨にあった妙は、雨宿りをした軒先で、新撰組に入る前の沖田総司と出会う。
 雷に怯える妙を優しくなだめてくれた沖田総司と妙は深く想い合う。
 その橋で明日、再会することを約束する二人だが、沖田総司に京都に行く話が持ち上がる。
 翌日の四月十三日に、妙は橋を訪れるが、橋の欄干に「ゆるせ 一年目の今日 かならず」の文字が刻まれていた。
 妙はその言葉を信じ、毎年四月十三日におもかげ橋を訪れる…」

・岩井しげお「黒髪」
「とある宿で、偶然、同宿することになった、スキンヘッドの侍二人。
 年も同じ頃、そして、二人とも剣の道を志すもので、意気投合。
 その二人が、何故自分が頭をまるめたかという理由を互いに話す。
 それは黒髪に関する話だった…」
 まあまあ、面白いです。
 前半の「人魚様」の話も、後半の「二匹の蛇」の話もまとまっていて、読ませます。
 オチが少し弱いのが難点ですが…。

 pp131〜133にかけて、年末旅行(?)で静岡県清水市の日本平へ出かけたという記事あり。
 また、児童向週刊誌Xが貸本単行本作家の引き抜きにかかって、失敗云々の記事もあり。筆者の週刊誌Xに向けた憤りと自分達への誇りを強く感じます。

・注1
「久方の光のどけき 春の日に 静こころなく 花の散るらん」
 という短歌からタイトルを採っておりますが、これって誰の歌…?

・備考
 ビニールカバー貼り付け。後ろの遊び紙の上隅に数字の書き込みあり。

平成26年11月25日 執筆・ページ作成
平成27年8月12日 加筆訂正

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