「オール怪談・64」(1965年頃/220円)



 収録作品

・小島剛夕「番町皿屋敷」
「江戸時代、菊の節句(重陽/陰暦九月九日)。
 菊見の宴を開いている、青山家の屋敷に一人の薄汚れた少女が、菊の香りに誘われて入り込む。
 そこの息子の三之助は少女を捕まえ、問うと、少女の名はお紺といい、お紺は両親を亡くし、おじからスリにさせられようとしているので逃げ出してきたのだと言う。
 三之助の母親はこの話を聞き、いたく同情し、お紺を屋敷に小間使いとして置くことに決める。
 お紺は実の娘のように大切に扱われ、名をお紺の好きな「菊」に改める。
 そして、お紺と三之助は静かに惹かれ合うのだった。
 一年後、三之助に将来のために、堺に行く話しが持ち上がる。
 三之助は菊に「私たちの母として」母親をよろしく頼むと言って、旅立つ。
 四年後、菊が花開く前。
 母親と菊は三之助の帰宅を待つが、母親の病はかなり重かった。
 母親は菊に打ち明けることがあると、土蔵の奥から封印の貼った箱を持ってこさせる。
 梵字により封印された箱は、霜秋(そうしゅう)という十枚の皿。
 これは将軍家より拝領した青山家の家宝なのだが、この皿には青山家に悲恋をもたらしてきたという。
 というのも、この皿には千姫の怨念がこもっていたのだった。
 この皿は、千姫が豊臣秀頼のもとに嫁いだ時に、淀君から賜ったものだった。
 が、千姫は、秀頼に続き、坂崎出羽守(さかがみでわのかみ)本多忠刻(ほんだただとき)と愛する者を失ってしまう。
 ある時、千姫は皿の四枚に忌の梵字を入れ、秀頼、出羽守、忠刻の迷魂を宿らせて供養しようとする。
 そして、四枚目の皿は、愛する人間を次々と失って、空蝉のごとく、魂のぬけた自分のためのものにする。
 しかし、皿は千姫を幸せにすることはなかった。
 姫に近づく男性は家名のためにことごとく暗殺され、そのことを知った千姫は乱心。後に、公儀の命により仏門に入る。
 そして、青山家の祖先は、この時に姫が愛そうとした男たちを殺したうちの一人だった…」(「オール怪談・65」に続く)

・岩井しげお「鼻」
「剣の達人である侍は、小さないざこざで町人の鼻を切り落とす。
 その日から断続的に、彼は鼻に痛みを感じだし、鼻が異様に膨れ出す。
 藩転覆のクーデターに参加していた彼は、その鼻のせいで同士達から別人のスパイと勘違いされてしまう…」

・関すすむ「七度尋ねて」
「とある田舎に近所同士の、梅田新助と古井寛太という侍。
 梅田新助は馬の目利きで、小金を貯めていて、侍のプライドにしがみつく古井には面白くない。
 古井は妻の命日のおすそわけと梅田の家を訪ねると、梅田の祖母が変死していた。
 そこへ梅田が帰ってきて、梅田は古井が金を狙って家に入り込み、その際に祖母を殺したと思い込む。
 斬り合いになり、梅田は古井もその娘も斬殺。
 しかし、梅田の祖母を殺したのは古井でなく、床下から生えた筍(たけのこ)が祖母の背中に刺さっていたのだった!!
 梅田新助は金を持って逐電しようとするが、古井寛太とその娘の亡霊がどこまでもつきまとう…」
 唐沢俊一氏により復刻された珍作「メーキャップ」「洗脳」の作者である関すすむ先生の作品は、基本的に全て「テキト〜」です。
「テキト〜」な内容かつ「テキト〜」な展開で、読んだ後には余韻も何もちっとも残りません。
 この作品も恐ろしく「テキト〜」ですが、畳み掛けるようにして亡霊が現われるところはかなり面白いです。
 しかし、何故「筍」なのか?……この一点で、この作品は珍作となってしまいました。

  ・備考
 状態悪し。小口研磨により寸法小さめ。ビニールカバー貼り付け。糸綴じの穴あり。pp1〜18(小島作品)、大きな裂けをテープで補修して、それが茶色に変色(中央の画像を参照のこと)。後の見返しに破れ、それをテープにて補修。pp27・28(小島作品)、pp49・50・57・58(岩井作品)、pp125・126(関作品)、下部に小さな補修痕(茶色)。

平成26年12月4日 ページ作成・執筆

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