「オール怪談・68」(1966年頃/220円)



 収録作品

・小島剛夕「女王蜂」
「下克上の世。とある山国。
 妻の黒萩に唆され、次々に同僚を手にかける鷲尾という侍。
 鷲尾は主君からの信頼も厚く、大切な砦を預かるまでになる。
 が、黒萩は主君までも殺して、一国一城の主になるよう強く求める。
 温厚な主君を殺すことをためらう鷲尾。
 主君が砦を訪れる前夜、鷲尾は砦の絶壁の前で黒萩の姿を見る。
 そこには、千年の由緒を誇る黒萩の先祖の死霊が取り囲まれた中で、祈る黒萩の姿があった…」
 今回はちょっぴり異色なのです。
 というのも、主人公は、美女キャラではなく、眉毛を剃り、三白眼のつり上がった悪女が主人公なのであります。
 この悪女が、恐ろしく鋭い目で至る所に眼力を飛ばしておりまして、下手なヤンキーよりはるかに迫力があります。
 小島剛夕先生には、女性キャラを主に担当していた西村つや子先生がおりましたが、この作品は恐らく、西村先生の手は入っていないように思えます。
 にしても、小島剛夕先生の描く悪女キャラ……う〜ん、味があって、いいなあ……美人なのか、美人でないのか、はっきりしないところが、クセになりそうです。
 ちなみに、ラストは表紙の絵の通りです。

・岩井しげお「歯」
「母を亡くし、父のもとに向かう、幼き兄妹。
 手持ちの金がなくなり、急いで峠を越えようとするが、途中で日が暮れてしまう。
 人家の明かりを見つけ、そこに駆けつけるが、そこには不気味な女がいた。
 二人が怯えていると、背後から美しい女性が現われ、二人に自分の家に泊まるよう勧める。
 不気味な女は二人を止めるが、兄妹は美しい女性の家に行く。
 懇切丁寧な対応をしてもらい、満足する二人だが、兄が夜、目を覚ましたところ、隣の部屋から二人分の声が聞こえる。
 兄が覗き見ると、女性の後頭部に口があり、そこから肉を食べていた。
 女性は「二口女」だったことに気付き、兄妹は逃げようとするが…」
 個人的には、この時期の岩井しげお先生の作品が好きです。
 内容的は「飯食わぬ女房」(注1)でして、どこか「昔話」といった趣があるように思います。
 昔話風なストーリーに独特のアレンジを施して、まとまった作品にしてあるところに好感が持てます。

・関すすむ「山の神」
「旅の侍が道に迷い、木こりの家に一夜泊めてもらう。
 木こりの話では、このあたりには化物が出るとのこと。
 特に、山峡の上流にある温泉に入ると、手足が痺れ、頭が朦朧とし、山の神にさらわれてしまうと言う。
 侍はそれを確かめにわざわざその湯に入りに行くが…」
 相変わらず、テキト〜な話でありますが、それなりに面白いのでは…。
 それから、入浴シーンというお色気シーンがあることも見逃せません。
 こんなサービス・シーンがあるのは、私の記憶している限り、いばら美喜先生の「悪魔」ぐらいでしょうか。(注2)

・鹿野はるお「解脱不動」
「金が全てと言う、冷血非道な守銭奴の万兵エ。
 彼には八重という娘があり、八重は父親に似ず、非常に優しかった。
 万兵エは急病で亡くなり、遺産目当てに親戚が集まってくる。
 しかし、遺書には、八重に千両箱を一つ残し、後は全部あの世に持っていくと書いてあった。
 八重が財産の隠し場所を知っていると考えた親戚達は自分の息子を八重と無理矢理に結ばせようとする。
 が、その度に万兵エの亡霊が現われて、彼らを八つ裂きにするのだった…」
 なかなかの逸品では?
 残酷描写がかなりエグいところに好感が持てます。
 ちなみに、「成田山不動明王利生記より」となっておりますが、本当なんでしょうか?

・注1
 柳田國男「日本の昔話」(新潮文庫/昭和58年6月25日発行・平成18年3月30日39刷)pp56〜58を参照のこと。

・注2
 この作品にも落書きが…H**Y S**T!!

・備考
 ビニールカバー貼り付け。ビニールカバーが破れたところの、紙カバー破れあり。糸綴じあり。全体的に目立つシミ多し(特に、小島作品と鹿野作品がひどい)。pp11・17(小島作品)、鉛筆による小落書きあり。pp76〜79(関作品)、赤のボールペンによる落書きあり(これは二人の女性の入浴シーンでして、補完をするためでしょうか、あれこれ描き加えております。気持ちは痛いほどよくわかるけども、借り物に落書きはいかんなあ…)。

平成26年12月11・12日 ページ作成・執筆

貸本・ひばり書房・リストに戻る

貸本ページに戻る

メインページに戻る