「オール怪談・70」(1966年頃/220円)
収録作品
・小島剛夕「義経と静」
「兄頼朝に追われ、摂津大物の浦から陸奥を目指す義経一行。
船上にて、義経の恋人(?)の静は、今は滅亡した平家の門の魂を慰めるために舞を舞う。
が、そこに現われたのは、天命を得ずして、無明の世に彷徨う平知盛(たいらのとももり)の霊だった。
船は嵐に遭い、大和の国吉野に流れ着く。
吉野で義経と静は幾日か平穏な日々を送る。
が、義経は奥州藤原氏のもとに向かうこととなり、病弱な静を吉野に置いていくのだった。
迎えに来るという義経の言葉を信じ、待ち続ける静に、頼朝から鶴岡八幡宮へ静の舞を奉納するよう依頼が来る。
もしかすると、頼朝の義経への怒りが解けるのではないかと考え、静は鎌倉へ向かう…」
原作は、能の「舟弁慶」でしょう。
まあ、日本史も古典もダメな私には、この手の歴史ロマンはさっぱりなのであります。
好き嫌いや理解の程度は別にして、「怪談」シリーズで傑作のうちの一つに入ると思います。
・岩井しげお「人舐(ひとなめ)」
「とある無人宿に一人の虚無僧がやってくる。
虚無僧は食事の時も深編み笠を取ろうとしない。
不思議に思った同室の男が虚無僧に問うと、虚無僧は深編み笠を取る。
虚無僧の顔半分は溶けて、ケロイド状になっていた。
驚いた男に虚無僧はこうなった理由を説明する。
一月前に、旅をしていた彼は、山中の家に宿をとった。
が、ここに住んでいたのが、人舐という妖怪で、長い舌で人肉を溶かして喰らうのだった…」
イヤな話です。
素朴な絵柄に関わらず、グロさは満点で、今読んでも、かなり気持ち悪いです。
子供なんかが、小島剛夕先生の優雅な作品の後に、何気なく読んでしまうと、トラウマになってしまうのでは?
あと、「人舐」という妖怪は、水木しげる先生の「鬼太郎」のヒットを受けて、岩井先生が考えたのだろうと思いますが、いい線いっていると思います。
まさかとは思いますが、「あかなめ」が元ネタとか…。
・福田三省「秘剣終りぬ」
「明治維新を目前にした頃、江戸。
松宮春代と新之助の姉弟はゴロツキ侍共に絡まれる。
二人の危機を助けたのは、鏡京四郎という侍だった。
彼は一宮抜刀術の達人だったが、無位無役で町人に交じって暮らす方を選ぶという変わり者。
が、自分の友人が病気のため、友人の道場の稽古を受け持つ。
その道場には彼が助けた松宮新之助がいて、鏡が稽古をつけるうちに新之助は立派な腕を持つようになった。
新之助は将来のために国許に戻るが、数年後、二人は官軍と彰義隊として相対することとなる…」
ちっとも怪奇マンガでありません。
恐らく、何かからの再録でしょうが、せめて多少なりとも怪奇色のあるものを掲載して欲しかったです。正直、不満です。
・備考
ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。pp99〜132(岩井作品、福田作品)、上部に水濡れの痕あり。
平成26年12月13・14日 ページ作成・執筆
平成27年3月15日 加筆訂正