「オール怪談・74」(220円)



 収録作品

・浜慎二「風は知らない」
「真面目で誠実な兄に、ヤクザな弟、そして、白血病で余命いくばくもない、年の離れた妹。
 兄がデパート等をいくつも経営する一方、弟はしがないトラック運転手。
 兄の財産に目をつけた弟は、兄が登山に行った際に、遭難させようとザイルに細工。
 弟の思惑通り、兄は雪山で遭難する。
 雪で方向を見失い、行き倒れた兄の目の前に、家で寝ているはずの妹の姿が現れる…」
 「怪談・40」(つばめ出版)からの再録。

・小島剛夕「眠れぬ墓標」
「八丈島からの赦免船を待つ志津。
 その船には、志津の恋人だった正太郎を殺したと疑われた冬吉が乗っていた。
 しかし、冬吉は発狂し、正太郎の死体も見つからず、事件は今も霧の中。
 真相を明らかにしたいと望む志津だが、もう一人、冬吉を待っていたものがいた。
 それは大工の棟領で、志津に横恋慕した彼は、冬吉の手を借りて、正太郎をノミで殺害し、地中に埋める。
 その際に、棟領は秘密を知った冬吉も殺そうとするが、失敗。
 だが、冬吉はその時の頭を強く打ち、発狂し、その結果、冬吉のみが疑われて、島流しにあったという経緯があった。
 冬吉が正気に返れば、己の罪が発覚するのは必至、棟領は冬吉をさらって、消そうとするが…」
 「オール怪談・38」からの再録。巻頭の紹介ページをご覧になりたい方はそちらのページにどうぞ。

・古賀しん一「四人目の被害者」
「ある科学者のもとで働く石崎に、目元ぱっちりの男が訪ねてくる。
 男は石崎に殺しの協力を頼む。
 二人は過去にコンビを組んで、高利貸しを殺害して、大金を奪ったのだが、その現場をある兄弟に目撃されたことがあった。
 ようやくその兄弟の居場所を突き止めたが、兄の方はその時のショックで記憶喪失にかかっていた。
 そのため、弟一人を殺せばいいことになり、二人は方法を考える。
 その時、科学者が生き返らせた死体が脱走、人を見かけては暴力を振るう。
 石崎は、弟を撲殺して、生き返らせた死体の仕業にしようとする…」
 粗筋を読んでも、ワケわからないと思いますが、実際にこういう話です。
 常人なら決して結び付けない要素を問答無用に組み合わせる豪腕は、やはり唯一無二。
 楳図かずお先生のエピゴーネンとして一段低く見られているような気がする古賀新一先生ですが、こういう短編マンガや「エコエコアザラク」等、絶対に楳図先生には描けないタイプのもののように思います。

・福田三省「溶ける顔」
「恋人を待っている最中、警官に職務質問される青年。
 警官とトラぶって、もみ合ううちに、警官はどろどろに溶けてしまった。
 彼は「電気人間」になっていたのだった。(いつ、どういう理由でそうなったか、一切説明なし。)
 警官殺しの現場に居合わせた、暴力団の組長に青年は匿われるが、犯罪の片棒を担がされる。
 が、次々と殺人を繰り返すうちに、青年は犯罪を犯すのがイヤになる。
 そこで、組長は青年の恋人を拉致して、青年を脅迫するが…」
 福田三省先生は、時代劇とかも描いておりますが、現代を舞台にした怪奇マンガの方が遥かに面白いです。
 この作品は「B級SFホラー」の珍作でありまして、「電気人間」と化した青年が片端から人間を溶かしていくという、ストーリーを聞くだけで心躍るようなゲテモノさが素晴らしい!!(注1)
 惜しむらくは、絵が古めかしく、今から見たら、残酷描写がちと弱いことですかね。(とは言え、かなり頑張っております。)
 個人的な推測ですが、この作品もいばら美喜先生の大傑作「焦熱地獄」の影響があるように感じられます。
 もしも、「焦熱地獄」の影響を受けずに、ここまでのものを描いたのであれば、凄いです…。

 扉絵は、「オール怪談・45」からの再使用です。

・注1
 このマンガを読んで、「チャイルド・ゾンビ」(原題「The Children」/1980年)というB級ホラー映画を思い出しました。
 原発事故で放射能の霧を浴びた子供達が、手の平から放射能を出すようになり、大人達に抱きついては焼き殺していくという、開いた口がふさがらない映画であります。
 日本版DVDも出ておりますので、この手のものが好きな方はどうぞ。

・備考
 状態悪し。カバー痛み及び汚れ。ビニールカバー貼り付け、及び、ビニールカバーの縮みによる本体歪み。糸綴じあり。前後の見返し破れ。

2014年12月16日 ページ作成・執筆
2017年5月9日 加筆訂正
2018年10月8日 加筆訂正

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