「オール怪談・81」(1967年頃/220円)
収録作品
・いばら美喜「大天才」
「神業に等しい、奇術で大評判の魔術師。
当り屋をしている二人組みは、魔術師に「なるべく大怪我をしているようにみせるため」に、魔術を教えてくれと頼む。
しかし、魔術師は「私の魔術にはタネがない。誰にでも出来るというものじゃない」と断る。
ごねる当り屋に、魔術師は線路のあるところまで着いてくるよう指示する。
電車が来ると、魔術師は線路に飛び込み、その身体の上を電車が通過。
唖然とする当り屋の目の前で、魔術師は平然と立ち上がる…」
いばら美喜先生の「怪談」シリーズの中でトップに位置する傑作というだけでなく、「怪談」シリーズの中でもトップ・クラスの面白さです。
荒唐無稽な設定、ハチャメチャな展開、妙にかっこいいセリフ回し、目が点になるラスト、粋なラスト一コマ…全てがここにあります。
・小島剛夕「女殺し油地獄」
「ある油屋の長男、与之吉は放蕩息子。
これには複雑な事情があり、父親は実の父親でなく、油屋の元・番頭で、与之吉の父親が亡くなる時に与之吉のことを頼まれたのだった。
それ故、番頭上がりの父親にとって、与之吉は「主」であり、強く出ることができない。
また、元・番頭の父親と与之吉の母親の間にできた弟が、与之吉が行末を誓った女性、お吉と結婚。
与之吉は転落の一途をたどる。
遂には、勘当され、借金を抱えた与之吉はお吉を頼るが…」
「オール怪談・46」からの再録。目次後のカラーの紹介ページを御覧になりたい方はそちらのページをどうぞ。
・山上たつひこ「仮装地帯」
「山奥の温泉に休養に来た、小説家の津雲仁助(つくもにすけ)。
ネタ探しに、旅館の女中に何か面白い話はないかと聞くと、二キロ程奥に新しい部落ができたと言う。
そして、その部落には奇妙な風習があり、肉親が死ぬと、ミイラにするという話だった。
一度、取材をしてみようと思うものの、その日に、同じ温泉に東京から来ていた中年の男性が岩山より転落死するという事件が起きる。
しかし、どうも腑に落ちないことが多い。そして、死体の爪の間にはさまっていたもの…。
翌日、死んだ男の娘が彼の部屋を訪ねて来て、父親の死の真相を知りたいと話す。
そこで、彼はカメラマン、娘はその助手ということにして、撮影目的の振りをして、部落を訪れる…」
これも非常に面白いです。
怪奇色を上手く絡めたミステリーなんですが、子供だましなところがないところに好感が持てます。
あと、山上たつひこ先生の初期の女性キャラの初々しさも印象的であります。
中表紙と、小島剛夕先生の「女殺し油地獄」が、「オール怪談・46」からの再録。
表紙のドクターはピーター・カッシング扮するフランケンシュタイン博士だと思うのですが、何故、コウモリが辺りに羽ばたいているのか謎であります。
(もしかして、ミイラ男みたいな怪物はクリフトファー・リー?)
ハマー・フィルムからの流用なのかもしれませんが、何の映画なのかは確認しておりません。
・備考
ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。前後の見返しにテープ痕、多々あり。
平成26年12月17日 ページ作成・執筆