杉戸光史「天使は二度死ぬ」(220円)



「中学生の船橋美津江、山田忍、小川近子は岩戸鍾乳洞へ取材に訪れる。
 古井戸の取材を終えた三人は鍾乳洞の奥を探索する。
 その際、美津江は岩陰に、顔半分が醜く爛れた男を目にして、悲鳴を上げる。
 男はすぐに姿を消し、三人が岩陰を見回すと、行方不明だった洋品店主の男性の死体があった。
 警察が捜査するも、犯人の姿も脱出経路も皆目、不明。
 凶器は、忍者の武器の千本ということもあり、伊賀流の流れをくむくノ一の山田忍は犯人を見つけようと決意するが、何者かに手を引くよう警告を受ける。
 事件から一週間経った頃、美津江は、小さな女の子が凄いスピードで走り、高い崖を一っ跳びで上がる様を目撃する。
 美津江が少女の後を追うと、絵を描く、新井順一という青年と出会う。
 美津江と順一は互いに好意を持ち、瞬く間に意気投合。
 また、先程の少女は彼の妹で、名は新井千代子という。
 二人が語り合っていると、千代子が急に苦しみ始める。
 その場に駆け付けた、セムシの老人が粉末の薬を飲ますと、千代子の発作はすぐに治まる。
 順一から千代子は心臓病と説明されるが、美津江はこれに疑問を抱く。
 その夜、美津江は、順一と出会った場所に教科書を忘れたことに気付き、忍と共にそこへ出かける。
 すると、そこに、全身が光り輝く千代子が現れる。
 千代子は口から涎を垂らし、奇怪な笑みを浮かべ、どう見ても、尋常な様子ではない。
 二人に気付いた千代子はもの凄いスピードで、その場から駆け去る。
 咄嗟に忍は追うが、二人の姿は三つ岩の辺りで消えてしまう。
 以来、忍は行方不明となり、翌日、美津江は三つ岩を調べに出かける。
 そこで、順一と出会い、昨夜のことを話すと、千代子は昨日、病気で家にずっといたと言う。
 とりあえずは納得するものの、忍の失踪から三日後の夜、美津江はどうしても気になって、もう一度、三つ岩を訪れる。
 そこで、再び、美津江は、光り輝く千代子を目撃する。
 千代子の向かった先は、蛍苔に一面覆われた洞窟であった。
 そこで、美津江は千代子に襲われるのだが、千代子の秘密とは…?」

 キテレツなマンガです。
 ネタばれですが、「千代子は蛍苔を薬として飲んでいるうちに、そのアルカロイド中毒となり、最後は発狂」という、とんでもない設定。
 身体が発光しているのも、蛍苔を過剰摂取したためのようです。(そんなの、ありえね〜だろ!!)
 と、少女がジャンキーになるというだけでもヤバいのに、加えて、伊賀流のくノ一と風魔一族まで入り乱れて、どうしたら、こんな発想が産まれるのかさっぱり理解できません。
 ともあれ、「怪奇もの」に「ドラッグ」「忍者」を異種配合して、産まれた珍作と思います。(注1)

 ひばり書房の黒枠単行本にて「恐怖の蛍ごけ」と改題と、若干、削除・変更されて再録されております。
 「天使は二度死ぬ」のタイトルは、日本を舞台にした「007」シリーズの「007は二度死ぬ」から採ったのでしょうかね。
 となると、この作品が描かれたのは、映画が公開された1967年頃でしょうか?

・注1
 「ドラッグ」と「忍者」と言えば、白土三平先生の名品「傀儡返し」があります。
 「マンガ黄金時代 '60年代傑作集」(文春文庫ビジュアル版/1986年6月25日発行)に収録。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。小口を緑に塗っている。p19、上部にボールペンで数字の書き込みあり。p89、上部のコマに剥げあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

2018年3月16日 ページ作成・執筆
2018年6月6日 加筆訂正

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