池川伸治「黒水仙はなぜ恐い?」(190円/1964年頃?)



「正子に付いて来て、そのまま、家に居座ってしまった、奇妙な少女、知佐子。
 知佐子は正子の部屋をメチャクチャにしたり、正子をベッドに縛り付けたりとやりたい放題。
 正子の母が警察に電話しようとすると、知佐子に家に火を付けると脅迫される。
 そこで、知佐子が隣に住む少女、アコと遊んでいるうちに、こっそり警察を呼ぶが、その時には正子の家は全焼していた。
 しかし、知佐子はアコが犯人だと言い、アコ自身も自分が家に火を付けたと主張する。
 仕方なく正子一家は物置に住み始めるが、正子の家の焼け跡で知佐子は何やら作り始める。
 それは焼け跡の廃材からつくられた、キリスト教の塔であった。
 その塔が話題を呼び、知佐子は芸術家として祭り上げられ、スポンサーも付く。
 正子一家の貧相な家の横に豪邸を建て、知佐子は日々創作に明け暮れる一方で、正子は、知佐子がアコをそそのかしたと考えていた。
 正子は、脅迫まがいの方法を用いて、アコの証言を翻らせると、正子は知佐子への復讐を企てる…」

 この作品は、恐らく、ひばり書房で池川伸治・名義で描かれた、最初のスリラー漫画だと思います。(表紙は、宏文堂でステキな表紙イラストを描いていた按田武志先生ではないでしょうか?)(注1)
 第一弾ということで張り切って描いた様子ですが、後記に「私も書き終わってみてあまりにも自分の漫画のつまらなさに腹がたっております」と記されてます。
 実際、メチャクチャな話で、矛盾しているところや全く意味不明なところが多々あります。(ラストは説教でお茶を濁すパターンです。)
 タイトルにある「黒水仙」も、最初の方で「知佐子が黒水仙ならば正子を白水仙にたとえましょう」との言及があるだけで、ストーリーに一切関わりません。
 こう言っては何ですが、かなりヒドい作品です。
 ただ、後記に、池川伸治先生の若かりし頃の写真(1963年7月10日撮影)が載っており、そこは少し得した気分です。

・注1
 それ以前は「夏川ちさと」名義で少女漫画を描いていた模様です。
 が、手持ちの資料が乏しく、詳しいことはわかりません。

・備考
 ビニールカバー貼り付け、また、一部のカバーが剥げ、カバー痛み。背表紙色褪せ。糸綴じあり。読み癖ひどし。シミ、汚れ、切れ、小欠損、多数。pp3・4、落書きあり。pp9・12・16・22、セリフの文字を一部、削り取っている。pp63・64、コマにかかる欠損。後ろの遊び紙、貸出票の剥がし痕と書き込みあり。

2018年12月4日 ページ作成・執筆
2018年12月20日 加筆訂正

貸本・ひばり書房・リストに戻る

貸本ページに戻る

メインページに戻る