杉戸光史「天使めくら岩」(220円)


「江梨子と美鈴の姉妹は、いとこの恵子の住む、高原の村で休暇を過ごす。
 その村には、めくら岩を祀る洞窟があった。
 めくら岩には何人もの盲人が吸い込まれたと言う伝説があり、洞窟から響く音はその盲人達が嘆き悲しむ声のようであった。
 ある時、美鈴が草原で昼寝をしていると、美しい笛の音を耳にする。
 笛の音のする方へ行くと、学生服の美青年が笛を吹いていた。
 そこへ、美鈴と恵子が通りがかり、話しをしている間に、青年は姿を消す。
 その夜、美鈴が寝付かれないでいると、彼女達の寝室を覗く者がある。
 障子がひとりでに外れると、老若男女様々な盲人達が美鈴を窺っていた。
 美鈴の悲鳴を聞いて、皆が目を覚ますが、障子ははまったままで、盲人達は影も形もない。
 その代わり、庭には昼の青年が岩に腰を掛けて、笛を吹いていた。
 青年は非礼を謝り、その場から立ち去るが、江梨子は彼に一目惚れしてしまう。
 翌日、江梨子が湖の畔で青年のことを考えていると、突然、蛇に襲われ、湖に転落。
 気が付くと、彼女は不思議な世界におり、そこで青年と会う。
 青年はここは夢と幻想の世界と教え、心の持ちようによって、世界が変化すると説明する。
 江梨子は、様々な世界をさまよった後、青年と再会するが、彼は盲目であった。
 ずっと夢の世界にいられるようにと、江梨子は盲人達に捕らえられ、青年の妹によって失明させられる。
 湖から救出された江梨子がその夢から覚めると、目は瞳を失い、白目になっていた。
 おじによると、彼女の夢に出て来た兄妹は、以前、めくら岩で行方不明になった盲人の兄妹らしい。
 そんな最中、眼医者である、姉妹の父親が村を訪ねてくる。
 盲人の兄妹の魔手は、美鈴と彼女の父親にも伸びる。
 どうやら、兄妹は姉妹の父親に恨みがあるようなのだが…」

 後記には、杉戸光史先生が内容を凝ったものにしようとして、逆にこんがらかってしまった、と書かれております。
 確かに、まとまりの悪い部分や説明不足の部分はありますが、ファンタジックな雰囲気があり、毛色の少し変わった作品としての評価もできるのではないでしょうか?
 岩の中に盲人達の楽園があるという発想は珍しいように思います。
 ただし、今現在では、タイトルで完全アウトな作品ではあります。(でも、差別を助長するような作品ではありません。)

・備考
 ビニールカバー貼り付け。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕と貸本店のスタンプあり。

2017年12月18日 ページ作成・執筆

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