池川伸治「血とバラ」(190円/1964年頃)



「湖の美しい、山奥の別荘地。
 幸子は杉山健一という青年と知り合う。
 彼は結核のため、東京からこの地の療養所に来たのであった。
 幸子は彼を家に連れて行く。
 亡き父親はバラが好きで、庭には多くの美しいバラが咲き乱れていた。
 しかし、じいやはこの家に男性を連れてくることを固く禁じる。
 というのも、幸子の妹の佐代子は母親の死後、発作的に気が変になるからであった。
 だが、佐代子は二人の目を盗み、健一と話をする。
 その夜、健一は「気持悪い音」を耳にして、窓から抜け出し、音のする方へ向かう。
 そこには四つの墓が並んでおり、急に音は止まる。
 翌日、彼は電話で佐代子から呼び出され、湖畔に向かう。
 姉妹でいるはずだったが、佐代子は嘘をついて、彼女しかいなかった。
 二人はいろいろな話をしているうちに、健一は昨夜のことを話す。
 佐代子によると、あの墓にはこの湖で自殺をした人達が葬られていた。
 しかも、彼らは皆、健一と同じ年ぐらいの男性で、満月の夜に亡くなっているという。
 四人が自殺した場所に行こうと佐代子は健一をボートに誘い、二人は湖に漕ぎ出す。
 その地点についた時、佐代子は健一にある打ち明け話をする…。
 一方、幸子は佐代子の姿がないことに気付き、爺やは大騒ぎする。
 どうやら爺やは何かを隠しているようなのだが…。
 そして、事態は思わぬ方向に展開する…」

 「血とバラ」と言えば、ロジェ・ヴァディム監督の吸血鬼映画の名作(とは言え、評価は分かれる模様。個人的には傑作!!)ですが、この作品はサイコ・スリラーです。
 一応、タイトル通りのシーンもあるものの、取ってつけたような感じで、インパクトだけでタイトルを拝借したのでしょう。
 ストーリーに関しては、「あとがき」にて池川伸治先生は「スランプにおそわれ」たと書いておりますが、それも納得の出来で、メチャクチャです…。
 特に後半の迷走っぷりは目も当てられません。
 ただ一つ、ボートのシーンはかなりサスペンスフルで評価できると思います。
 あと、作品の途中の休憩ページに、夏川ちさと「悲しき十六才!」という小文があります。
 憧れの男性が他の女性と結婚するだけでなく、子供扱いまでされ、少女がヨヨヨ…と嘆くだけの内容です。

・備考
 ビニール・カバー貼り付け。糸綴じあり。前後の見返しのノドに紙テープにて補強。シミ・汚れ・切れ多し。pp133・134、上部角にページにかかる小欠損。p134、鉛筆での「絵物語」という書き込み。後ろの遊び紙、貸出票の剥がし痕と書き込みと貸本店のスタンプあり。

2023年7月22日 ページ作成・執筆

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