松下哲也「乙女の殺した十三人」(220円)

「天明二年から七年にかけて北奥羽を襲った大飢饉(1782年〜1787年)。
 南部盛岡藩の支藩、南部八戸藩、そこの名久井岳の麓にある名久井村。
 名久井村の名主である美都(みつ)の父、柴崎庄右ェ門は、飢えた村民に自分達の蓄えを分け与えていた。
 その噂を聞きつけ、名主の屋敷にお侍が立ち寄り、藩政を嘆く。
 彼は、その地方の代官、倉松信平の息子、長四郎であった。
 長四郎は、志を同じくする仲間と共に、藩の倉庫から米を盗み出し、美都のもとに届ける。
 美都の胸に長四郎の面影が刻まれ、美都は再会を待ち望む。
 が、二度目に倉から米を運び出そうとした際に、計画が発覚し、長四郎は投獄、父信平は責任を全て被って切腹する。
 一年後、牢の中の長四郎は、恐ろしい噂を朋友から聞かされる。
 美都が、飢えのあまりに、人肉を喰い、村人から鬼と恐れられていると言うのだ。
 仲間の協力を得て、牢を脱け出した長四郎は名久井村に向かう…」

 松下哲也先生の作品には、普通では考えられないほどに個性的なヒロインが出てきます。
 その中でも、この作品に出てくる美都は最左翼に位置するでしょう。
 ネタバレとなりますが、「最初は聖女のように村人を救おうとするが、飢えに耐え切れず、人肉を食べるようになる少女」がヒロインなのです。
 こりゃ、あ〜た、「猟奇!!喰人鬼の島」ですがな!!…と、心躍るのも束の間、「人喰い」シーンは一切ありません。
 飢饉の陰惨な描写や、石打の刑といったグロ描写はあるものの、基本的に、純愛ものなのであります。
 しかし、ヒロインがアレ過ぎて、感動とは程遠い…そういうビミョ〜な作品です。

・備考
 状態悪し。ビニールカバー貼り付け、また、貼り付けによる本体の歪みが激しい。加えて、全体に亘って本文に水濡れの痕、甚だしく、これがまた、本体の歪みにつながる。pp94・95、下部の余白に何かが挟まったための剥げあり。pp120・121、下部のコマに何かが挟まったための剥げあり。

平成27年7月27日 ページ作成・執筆

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