さがみゆき「悪女の血が凍る」(220円/1966年の初め頃)
「受験勉強のために、東京から小さな島を訪れた、ひろし。
土地に不案内なひろしは砂浜にいる少女に道を尋ねるが、少女は怯えたように逃げ出してしまう。
ひろしの家で働く婆やの孫娘のいく子がひろしを迎えに来るが、ひろしが砂浜で出会った少女のことを話すと、顔色を変える。
その少女は島では「こうもり少女」と呼ばれ、島の人々は決して関わろうとしなかった。
「こうもり少女」が生まれる時、家の周りを無数のこうもりが飛び回っていたと言う。
そのことがあり、迷信深い島民達は「こうもり少女」は人の血を吸い、話をするだけでも呪われると信じていた。
真剣な顔をして、ひろしに警告するいく子を、ひろしは迷信だとあっさり笑い飛ばす。
「こうもり少女」に興味を覚えた、ひろしは彼女と親しくなろうと努力を重ねる。
最初は、ひろしを裂けていた「こうもり少女」であったが、徐々に心を開いていく。
「こうもり少女」と呼ばれる少女はアヤという名で、何の変哲もない、普通の心優しい少女であった。
独りぼっちのアヤの唯一の友達は洞窟に住むこうもりだけであったが、こうもりの餌の虫を捕まえるのにも、ひろしは積極的に協力する。
互いに惹かれ合うようになる二人だが、いく子はそれを苦々しげに思う。
ある日、虫を集めていたひろしがマムシに噛まれるという事故が起きる。
毒を吸い出そうと、アヤは傷口に吸い付くが、その現場をいく子に目撃されてしまうのだった…」
さがみゆき先生お得意の悲恋ものの佳作です。
おどろおどろしいシーンはほとんどありませんが、pp92〜99の吸血鬼と化したアヤが夢に出てくるシーンはかなりの迫力。
どんな作品でも、残酷描写や恐怖シーンになると、途端にヒート・アップしてしまうところに、さがみゆき先生のポテンシャルを感じます。
ちなみに、右側の絵は、ストーリーに関係なく突如として現れる一枚絵であります。
蜘蛛の巣柄の着物という、悪趣味なのか斬新なのかわからない少女の絵は、「人喰い屋敷」(貸本/東京トップ社)でも表紙を飾っておりました。
さがみゆき先生の実家の影響でありましょうが、着物姿の女性の絵はセンスがあって、素晴らしいです。
・備考
状態悪し。ビニールカバー下半分貼り付け。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。ぱっと見はきれいだが、水濡れが非常にひどい。湿気のせいか、本がべっこんべっこんに歪んで、ページを開くのにも手間がかかる。全体的に上部に水濡れの痕あり。p127〜p136までの水濡れはかなりひどい。pp5〜18、ページの端っこに微妙な破れあり。
平成27年11月17日 ページ作成・執筆