池川伸治「肉面」(220円/1967年12月27日完成)



「皆に王女様と崇められる、高級住宅地に住むお嬢さまの美々子。
 それとは正反対に、クラスの中の爪はじき者で、クズ屋の醜い娘、夏目。
 美々子は、夏目のあまりの惨めさに同情するが、夏目にとってはそれが逆に耐えがたい。
 遂には、自分のあまりの醜さ・惨めさに悲観し、夏目は川に跳び込んで、自殺を図る。
 失踪した夏目を心配し、美々子は彼女を探すが、父親すらもろくろく関心を抱いていない有様。
 数日後、夏目の父親を訪ねた帰り道、美々子は少年から夏目の居場所に案内すると話しかけられる。
 美々子が少年に付いていくと、人里離れた、森の中の洋館に着く。
 屋敷の中で、美々子は、自分と瓜二つの少女に出会う。
 その少女は夏目で、カツラと精巧にできた肉面をつけて、美々子に化けていたのであった。
 家に帰ろうとしない夏目に、美々子は彼女を理解して、救いたいと力説する。
 すると、夏目は、美々子も肉面をつけて、一日、互いの生活を交換するよう提案する。
 屋敷の持ち主の科学者によって、美々子は夏目そっくりの肉面を付けるのだが、そこにはある陰謀が進められていた…」

 前作から一週間もたたずに描き下ろされた作品でして、勢いがあって、なかなか面白いです。
 よほど描きたいテーマであったのでしょうか、ストーリーに下手な小細工を弄して混乱したりしておらず、ストレートな印象を受けます。
(とは言え、p100の「ドアの外で立ち聞きする女中」の描写は全くストーリーに絡んでこなかったりします…。)
 ストーリーは「顔のない眼」、新藤兼人監督の「鬼婆」、マーク・トウェイン「王子と乞食」あたりをごちゃ混ぜて、何故「美・醜」「貧・富」「幸・不幸」というものがあるのか?という思索をスパイス代わりに振りかけたものと言えば、わかりよいでしょうか。(ちっともわかりません…。)
 まあ、ぶっちゃけ、結論は「同情するなら、金をくれ!!」なのであります。
 んでもって、読後、最も印象に残っているのは、「ドヤ街」描写だったりする…そういうマンガです。

 それから、興味深かったのが、物語の途中に挿入される「僕の漫画航路 その三」であります。
 池川伸治先生のお師匠、牧かずま先生(詳しくは知りません)のもとでのアシスタント時代について書かれており、その頃、あの白土三平先生もアシスタントをされていたそうな。
 また、谷ゆきお先生ともその頃、お知り合いになったとのこと。
 今は半ば忘れ去られた、漫画黎明期の様々なドラマ、埋もれたままにしてしまうのは惜しいように思います。

 ちなみに、どうでもいいことですが、このマンガを読んで、しきはるみ先生の「鬼の母」を連想しました。
 あちらも「クズ屋の娘」だし、もろ「鬼婆」だし…偶然の一致でしょうが…。

・備考
 ビニール・カバー貼り付け、また、それに伴う歪み・痛みあり。読み癖あり。シミ・汚れ、切れ、小欠損、多数あり。前表紙の裏、破れあり。p24、ボールペンによる、セリフの落書きあり(「あら、パンツがみえてるわ?」「ばか」…って、オイ!! しょ〜もない落書きすな!!)。p72、空白部分に少女マンガ風の女の子の落書きあり(こちらの方はほっこりします)。後ろの遊び紙、鉛筆での書き込みあり。

2016年10月24日 ページ作成・執筆

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