池川伸治「死季の花」(200円/1964年頃)

「由本恵美は美波高校に通う少女。
 定期券を落としたことをきっかけに、別のクラスの平田允信(みつのぶ)とお知り合いになる。
 ハンサムな彼に恵美は心惹かれるが、彼には三人のガールフレンドがいた。
 允信に付きまとう、お転婆娘、佐代子。
 平田家のお手伝い、智加代。
 そして、恵美の親友でもある、百合子。
 恵美の允信に対する思慕は深まっていくばかりで、どうにかしてお友達になりたいと願う。
 そんなある日、恵美達は、允信と三人のガールフレンド達とハイキングに出かける。
 折角のお近づきになるチャンスなのに、三人のガールフレンドは允信から離れない。
 その一人、佐代子が崖っぷちに生えている花を取ろうとする。
 恵美が憎しみの心で崖から落ちるよう欲すると、美代子は足を滑らし、谷底に転落、帰らぬ人となる。
 だが、皆が悲しむ中、恵美はライバルが減ったことをひそかに安堵していた。
 季節が廻り、恵美は允信と親しくなり、急接近。
 二人の仲を勘付いた百合子とは疎遠になるも、恵美は彼を独占したくて仕方がない。
 彼の誕生日が近付く中、恵美は心を込めて、プレゼントの手袋を編む。
 しかし、智加代から彼と共に通学しないよう言われ、誕生日パーティへの招待もなし。
 誕生日当日、恵美が允信の家に出向くと、家の前で智加代に出会う。
 彼女から、允信は恵美のことが大嫌いだと言われ、プレゼントの手袋も鼻で笑われる。
 怒り心頭に達した恵美が、憎しみの心で車に轢かれて死ぬよう願うと、智加代の連れていた犬が走り出し、彼女は通りがかった車に轢殺される。
 二人の人間が自分の願い通りに死んだことに恐怖を覚えながらも、ライバルの不幸を喜ぶ気持ちを恵美は抑えきれない。
 智加代が死んで数日後の夜、恵美は百合子から崖っぷちへひそかに呼び出される。
 百合子の思惑とは…?
 そして、恵美の前に思い出したように現れる、全てを見透かしたような少女の正体は…?」

 かなり面白いです。
 「願い通りに人が死ぬ」という、よくあるストーリーですが、ラスト、予想外の展開を見せ、なかなか才気走ってます。
 まあ、結末は予想の範囲内に収まっておりますが…。
 ちなみに、謎めいた少女の正体はこの作品では明らかになりません。
 作品のラストにて次回の作品で明らかになると書かれてますが、次回予告がなく、何の作品かがわかりません。
 個人的には、「奇・理子の墓」ではないかと推測しております。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。読み癖があり、切れ、汚れ、シミ多し。p54、上部に青インクの染みあり。前後の遊び紙の裏、p38、p100、p106、女の子のものらしい、味のある落書きあり。後ろの遊び紙、書き込み及びスタンプあり。

2017年7月11日 ページ作成・執筆

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