杉戸光史「赤い館の四つの死」(220円/1965年頃)
「1965年7月8日。
田林純子が自宅の庭でくつろいでいると、奇妙な少女が現れる。
少女はすぐに姿を消すが、いた場所には木彫りの人形が残されていた。
人形は姉の婚約者にそっくりに彫られており、その背中には当日に死ぬ旨、記してあった。
その直後、予告通りに、姉の婚約者は、二階のベランダの柵が壊れ、転落死する。
純子は少女と人形のことを父親と姉に話すが、以来、二人の様子がおかしくなる。
二人の様子を訝りながらも、数日が経った、ある雨の夜、あの少女が彼らの前に再び姿を現わす。
今度は少女は純子の飼い犬の人形を残して、姿を消すが、その予告通り、翌日、飼い犬は病院を脱け出した精神分裂病者によって刺殺される。
そして、今度は、庭に、彼女の家族の人形が四体(父親、姉、純子、勘当された兄)、置かれてあった。
だが、この人形の背中には何も記されていない。
純子が、父親と姉にこの人形を見せると、父親が重い口をとうとう開く。
この人形は人の生死を左右する力があり、人形を焼けば焼死し、バラバラにすればその通りになって死んでしまうと言う。
八年前、父親と姉を乗せた車が、突然車の前にとび出してきた人形少女を轢き殺してしまう。
二人が少女の祖父の家に向かうと、特に驚いた様子はなく、少女の人形を見せる。
少女の人形には、交通事故にあった日が刻まれていた。
この少女は特殊な能力があり、彫った人形によって人の死を予言していたと、祖父は話す。
父親は、何故自分の命日を守る必要があったのか?という質問に対して、祖父は「運命」と説明する。
前世の因果で少女は自動車事故で死ぬ運命であり、父親は少女を轢き殺す運命であった。
そして、少女の祖父は、、少女は生まれ変わって、八年後、自分を殺した者に復讐すると付け加える。
それから八年経った今、人形少女の復讐が純子の家族に本格的に始まろうとしていた。
とりあえず、彼らは自分達の人形をどこかわからない場所に隠すのだったが…。
人形少女に生命を握られた彼らの運命は…?」
粗筋を読んでも、釈然としないでしょうが、実際、デタラメな内容です。
特に、ラストはどんでん返しを狙ったつもりが結果、全てをぶち壊してしまった感じで、「今までの人形少女の行動はなんだったの…?」と思わずにいられません。
人形少女からのサバイバルをストーリーの中心に据えたら、多少は面白くなったかもしれない…と惜しまれます。
この作品を読んで思ったことは、杉戸光史先生の貸本怪奇マンガには、この作品のように練り込み不足ものが多いということ。
あと、「物語の冒頭から、散々思わせぶりな描写を見せておいて、悪者かと思いきや、唐突に、実は味方だったことが明らかになるパターン」もよくあるなあ…。
・備考
ビニールカバー剥がし痕あり。カバーの表紙と背表紙に欠損及び痛みあり。カバー貼り付け。前後のノドに紙テープで補修。糸綴じあり。後ろの遊び紙欠損。
2017年12月19日 ページ作成・執筆