松下哲也「怪談不死蝶夏子」(220円)
「旅芸人の一座にふと現れた一人の女、夏子。
御贔屓が多いのだが、病に倒れた良太郎の代役として、夏子は座に潜り込む。
踊りも芝居もできる夏子だが、彼女の思惑は全く別のところにあった。
良太郎の御贔屓の夫人が金持ちであることに目をつけ、夏子は家族の苦境を話し、高額な借金を良太郎を通じて申し込む。
しかし、家族の苦境は全くの作り事で、夏子は金を手に入れた直後に逐電するつもりだった。
そのために、良太郎は座の金を盗み、発覚。
結局、夏子と良太郎の二人は座を追い出される。
また、新たな道を探す夏子に、良太郎は自分も連れて行くように頼む。
が、夏子は、病気持ちの良太郎なんざ足手まといでしかなく、夏子は、彼女に横恋慕する男を使って、良太郎を溺死させる。
悪事を働くために生きている夏子を待ち受ける運命とは…」
実は、怪談ではありません。
一応、幽霊となった良太郎の描写が申し訳程度にあることはあるのですが、全編を通して、夏子の悪意に満ちた策略がストーリーの主眼でありまして、「毒婦」ものと形容すべきです。
(「ファム・ファタール」なんて言葉はちっとも似合いません。「毒婦」で充分です。)
内容的には、とことん「鬱」です。本当に気が滅入ります。
三田京子先生がイニシアチブを取っていたのかもしれませんが、どこか「ぶっきらぼう」なところが松下哲也先生らしい…ような気がします。
・備考
ビニールカバー貼り付け、また、それによる表紙の歪みが若干あり。前後の遊び紙の部分に補強あり。後ろの遊び紙欠損。シミ多々あり。
平成27年8月4日 ページ作成・執筆