池川伸治「私は死にたい」(190円)



「成美は、居間で、母親がはげ頭の老人に首を絞められているのを目撃する。
 慌てて、家の人を呼ぶが、その時のは居間には誰もいなかった。
 しかも、その最中、当の母親が外出から戻ってきて、居間にいるはずがない。
 成美は両親にそのことを説明するが、錯覚だと片付けられる。
 その翌日、同じ部屋で、襲われた母親が、老人の右目に鋏を突き刺すところを目にする。
 この度も、母親は外出中で、部屋には騒動の形跡は全くなかった。
 家族は成美の頭がおかしいのではと考えるが、成美は自分が見たものが幻覚ではないと信じる。
 そんなある日、アパートの隣部屋に、老人とその孫のアッコという少女が引っ越してくる。
 その老人は、成美が幻で見た老人であった。
 しかも、その老人は右目に黒いアイパッチをはめていた。
 成美は、とあるきっかけからアッコと仲良くなり、老人について探りを入れる。
 老人は朗らかで、優しい人物であり、話から聞く限りでは怪しいところなどない。
 また、老人にアイパッチを外してもらったところ、事故で視力を失っているものの、右目はちゃんとあった。
 すっかり混乱してしまう成美。
 だが、また、幻が成美の前に現れる。
 今度は証拠を残そうと、成美は、老人が母親の目を針で潰すところをカメラで撮影するのだが…」

 ネタばれですが、「一か月後に起こる悲劇を幻視する」というストーリーで、まあまあ面白いです。
 それよか、目にぶっすり刺さる鋏の描写の方がかなりキテおりますが…。(注1)
 また、本編中に急に挿入される休憩タイム「私とスリラー」にも注目です。
 これは池川伸治先生宛に読者から「池川伸治 死ね死ね」という手紙が来て、池川伸治先生が軽いノイローゼになる話です。
 最後の方で、
「どうぞ あの変な手紙を下さった方…
 もうあんな手紙は寄こさないで下さい…
 私はとても気が小さいので、本当に死んでしまいますから…」
 と、池川伸治先生の意外な繊細さを窺うことができます。(本気にしていいものかどうか迷いますが…。)(注2)

・注1
 鋏が凶器と言えば「バーニング」ですよね。
 でも、あのような大き目の植木ばさみよりも、家庭用の布切バサミの方が、個人的には不快度が高いです。
 クリント・イーストウッドの監督第一作かつストーカーものの傑作「恐怖のメロディー」では、医者が胸に鋏を突き立てられるシーンがありました。
 また、何の映画か忘れましたが、首を鋏で切って自殺というシーンもかなりのトラウマです。(「デッド・ゾーン」?それとも、ダリオ・アルジェントの「シャドー」?)
 それと、ジャン・ローランの何らかの映画で、両目に鋏というシーンを本で見ましたが、かなりキュンときました。
 自分から言い出しておいて、何ですが、うわぁ〜、イタイ、イタイ!!

・注2
 もしも機会があれば、怪奇マンガ家の先生方に、読者からの手紙にどんなものが来たことがあるか、あれこれお聞きしたいものです。
 誰か、こういう企画を立ててみませんか。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。読み癖あり。目立つシミ、非常に多し。後ろの袖に貸本店のスタンプ押印。

2017年4月18日 ページ作成・執筆

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