「怪奇時代B」(150円)



 収録作品

・久滋あきら「幽鬼の谷」
「戦国時代、伊賀と甲賀は、四百年来の宿怨から、血みどろの争いを続けていた。
 ある日、小影は、兄弟同様であった小次郎が戦いで死んだと聞き、戦場へと駆け付ける。
 そこには小次郎の死体はなく、小影が辺りを捜すと、小次郎は離れた岩の上に座っていた。
 小次郎は、理由もなく争い続ける忍者がいやになった、人の世へ行くと呟きながら、幽鬼の谷へと向かう。
 小影が追うと、淵には、小次郎の死体が沈んでいた。
 小影は、小次郎の幽霊に導かれるまま、名張の里から姿を消す。
 時は流れ、小影は、織田信長に召し抱えられる。
 これで、日陰者の身から逃れられると考えるのだが、彼の前に再び、小次郎の霊が現れる…」

・小島剛夕「曼珠沙華」
「お糸は、御用聞き(岡っ引きの異称)の清吉の娘。
 春彼岸の雨の日、彼女は安念寺に、恋人だった万太郎の墓参りに行く。
 人の視線を感じ、振り返ると、旅装束の奇怪な男が彼女に「おんねん(怨念)じはここか」と尋ねられる。
 彼女は慌ててその場を去るが、いつの間にか、曼珠沙華の花が髪に刺さっていた。
 彼女は、その男の目に見覚えがあり、懐かしさを感じる。
 一方、清吉の子分、丑松は、この男の話を聞いた時から、様子がおかしくなる。
 この男の正体とは…?」

・鹿野はるお「復讐鬼」
「大江の兼基(かねつね)は、平氏の隠然勢力者、静海入道忠盛に妻を奪われ、反逆者として鬼界ヶ島に流される。
 清盛の死後、赦免船が来るが、彼は選ばれておらず、また、恋人の渚も連れ去られてしまう。
 絶望のあまり、彼が自殺しようとした時、同じく、静海に恨みを持つ橘の麻呂が彼を止める。
 橘の麻呂は、兼基に巻物を与え、三七二一日間、これを習い覚えて、妖術を身につけるよう言い残すと、この世を去る。
 こうして、兼基は「魂は現世より第四次元の世界に入」り、ある時、漁民の船を奪って、島から脱出。
 以後、京都では、恐ろしい面を付けた復讐鬼が、平家の侍の屋敷を襲っては、家族ごと皆殺しにする事件が続発するようになる…」

・福田三省「海を渡る首」
「近江屋善兵ヱは、役人の松尾に賄賂を贈らなかったばっかりに、密貿易の濡れ衣を着せられ、財産没収・一家離散、そして、善兵ヱ自身は遠島となる。
 五年後、善兵ヱを取り調べた御用聞きの平吉は、松尾から、善兵ヱが島抜けをしたと聞かされる。
 その翌日、神田川に生首が浮かんでいるとの知らせがあり、駆け付けると、川に浮かんでいるのは、善兵ヱの首であった。
 子分に首をすくわせようとするも、首はすいすいと逃れ、やがて消えてしまう。
 善兵ヱが首を捻っていると、近江屋の荒れ屋敷の前に、怪しい女巡礼がいる。
 捕らえたところ、彼女は近江屋の娘、お鶴であった。
 平吉は善兵ヱの行方を知っているのではないかと考え、彼女を拷問にかける。
 しかし、平吉の娘、お美和が、お鶴と同じように苦しみ悶える。
 お鶴とお美和の関係とは…?」

・藤井博文「闇の乱れ星」
「代官の黒川は、宗庵の描いた潜水器の赤図面を狙っていた。
 宗庵は、悪用されることを恐れ、唖の召使い、牛松に金庫の鍵を渡し、図面を守るよう頼む。
 代官屋敷で宗庵は牢屋に入れられ、代官の一味が宗庵の屋敷に乗り込む。
 だが、金庫の中にも図面はない。
 牛松は隙を見て、逃げ出し、宗庵の知り合いの大川鯉之介を訪れる。
 そして、鯉之介に、宗庵が絵を見てくれると伝えるのだが…」

 この本では、鹿野はるお先生「復讐鬼」が最も面白いように思います。
 オカマっぽい絵柄の印象が強いですが、この頃は少年漫画の絵柄で、味があっていいです。
 ただ、女子供まで容赦なく惨殺しているのは、どうかと思いますが…。
 ちなみに、大御所の小島剛夕先生「曼珠沙華」は、ストーリーに無理があって、イマイチな出来です。
 ただ、よくよく考えると、小島先生で、失敗作と思えるような作品って、逆に珍しいのではないでしょうか?

・備考
 カバー貼り付け。袖にパラフィン紙、貼りつき。前の見返し、貼りつき。糸綴じあり。p34、下部に、コマにかかる汚れ。p55、ハンコ押印。p59、セリフに鉛筆でライン引き。pp107・108、下部隅にコマにかかる欠損あり。

2020年5月6日 執筆・ページ作成

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