池川伸治「奇・理子の墓」(200円/1964年頃?)
「治は両親を自殺で失い、おじの屋敷の離れの小屋に住む青年。
彼の前に理子という奇妙な少女が現れる。
治の心配をよそに、理子は強引に彼の小屋に住みつく。
一方、おじの屋敷では、親戚の子、ケンを預かることとなる。
ケンはトンガリ帽子をかぶり、大人相手に平気で毒づく、これまた一風変わった少年であった。
理子が来てから、治と屋敷のお嬢様、鹿子の仲は急速に接近する。
しかし、屋敷では、鹿子の母親が夜中に襲われたり、番犬が叩き殺されたりとおかしなことが続出。
どうも理子とケンの二人に関係があるようなのだが…」
わかりにくい粗筋だとは思いますが、実際、どう内容を説明したらいいのか、悩んでしまうのであります。(池川伸治先生にはそういうマンガが幾つかあります。)
一種の「寓話」と見做すことができるかもしれません。
ただ、後記に「作者のいきすぎもあってこなしきれなかった」とあるように、決してわかりやすく、納得できるような内容ではないのです。
タイトルにある「奇・理子の墓」も、ラスト近く、突然、何の説明もなく、お墓がどんと出てきて、「なんじゃそりゃ〜?」とあっけにとられます。
こう書くと、失敗作のようですが、そう言い捨てるのもちょびっとためらわれるという、摩訶不思議なマンガなのであります。
ちなみに、この単行本でマンガよりも(遥かに)おもしろいと思われるのは、マンガの途中で、急に挿入される「ある九州の一中学生より」(pp79〜83)という一文。
池川伸治先生の読者からの手紙を紹介しているのですが、まず先生のマンガを「くだらない」と一蹴。
そして、
「漫画にしろ、小説にしろ、物語というものを書く以上、一定の筋は通るように書くべきだと思います。
なのに、あなたの漫画を見てみますと、始めは、調子よく書いていくんだが、あとで何が何だかさっぱりわからなくなって、エーイ、仕方がないこうしちゃえ!…と半ばすてばちな気持で書いた…そういう感じがします。」云々。
かなり辛辣な意見ですが、なかなかの卓見であります。(うなずける部分がまあまあ…いえ、たくさんありました。)
それに対する池川伸治先生がまたステキなのです。
色々反省させられると言いながらも、「スリラーと言うものはふつうの漫画のような構成は必要ありません」と断言!!
「究極の目的は「スリル」を与えて、読者を楽しませること」だけであり、その他は枝葉、構成だってメチャクチャでも構わないと書いてます。(実は、逆ギレ?)
というワケで、結局、大して反省するわけでなく、この後もこの調子で快(怪?)進撃を池川伸治先生は続けていくのでありました。
まあ、言いたいことはわかりますけどね、ものには程度ってものがあるような気がしないこともないかも…。
このあたりのことが結局「諸刃の剣」になったのかもしれないと、個人的に考えております。(まあ、真相は池川伸治先生が天国に持って行きました。)
・備考
ビニールカバー貼り付け。読み癖あり。目立つシミ、幾つかあり。前の遊び紙、一部欠損。後ろの遊び紙、貸出票の貼り付けあり。
2016年9月2日 ページ作成・執筆