杉戸光史「鬼火沼の天女」(220円/1966年夏頃)
「長野県朝霧山中にある鬼が原部落。
真由美は、そこに住む、親戚の山谷ゆり子を東京から訪ねる。
山谷ゆり子の父親は部落の庄屋(村長)であり、古文書に記されていた豊臣家の隠し財宝を血眼になって探していた。
また、国会議員の黒川も、その財産に目を付け、山谷家の山を売るよう迫る。
真由美が山谷家に着いた時、村の子供が溺死したという知らせが届く。
ゆり子は否応なく真由美と共に隣部落の寺に赴くことになるが、その理由は奇怪なものであった。
昔からのしきたりとして、鬼が原部落では、死人が出た夜は部落の人全員が部落を離れることになっていた。
何故なら、鬼娘がその夜、死体を食べに来るからであり、鬼娘に見つかって、助かった者はいない。
この話に興味を感じた真由美は、こっそり部落に戻ってみる。
だが、おじと入れ違いになり、慌てて無人の部落を後にする。
隣部落に向かう途中、鬼が原部落に最初に来た時に見かけた、美しい娘を目にする。
彼女の後をつけるが、気付かれてしまい、逃げようとしたところを崖から転落してしまう。
気が付くと、見知らぬ洞窟の中、真由美はその娘に介抱されていた。
ユミと名乗る娘は、真由美を「豊臣家最後の流れをくむ琴姫様」の生まれ変わりだと言い、四百年の間、豊臣家復興のための財宝を守り続けてきたと話す。
更に、ユミから琴姫様と称するミイラを見せられ、真由美はユミを「気狂い娘」(ソノママ)だと考える。
なるべく刺激しないように、真由美が、家に帰してくれるようお願いすると、ユミは琴姫様の自覚を取り戻すまでの間ならと、真由美に催眠術をかけ、翌朝、真由美は崖下で発見される。
以後、平穏な日々を取り戻したかに見えた真由美であったが、影のようにつきまとうユミの姿があった。
そして、ゆみ子の父親の命を狙うサングラスの青年、財宝を狙う黒川、神出鬼没の謎の少女といった面々が絡み合って、ユミの正体が明らかになる…」
ストーリーは程々にまとまっており、ゴア描写、グロ描写もちゃんとあって、面白いと思います。(小泉八雲「食人鬼」の要素あり)
ただ、これではインパクトが足りないと杉戸光史先生は考えたのか、「天王(神)の使いの少女(天使ともいう)」(p135)を導入。
その結果、釈然としない印象のみが残る出来になってしまったような気が…。
ラストのクライマックスで、「天使らしき少女が急に出て来て、鬼娘から「悪魔の心」を取り除いて、チョン」で納得できる人はいるのでしょうか?
大体、そういうものは芽のうちに摘んでおくものだと思います。
・備考
ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。本文、シミや汚れ、多し。pp64・65、食べかすが挟まったための剥がれあり。後ろの遊び紙に貸出票の貼り付けあり。
2017年11月16日 ページ作成・執筆