藤咲のぼる「墓場から来た男」(130円)



「より子は、五年前(注1)、おじと一緒に満州から引き揚げてから、二人で暮らしていた。
 両親は既に亡く、仏壇にある懐中時計が、満州で病死した父親の形見であった。
 ある夜、包帯で顔を隠した、義足の男が、おじの家に現れ、父親の時計を渡すよう迫る。
 おじは助けを呼ぼうとするも、松葉杖に仕込まれた銃で撃たれてしまう。
 おじは病院で時計に秘密があると話すが、その秘密を話す前に亡くなる。
 一人ぼっちになった、より子は、浩二という少年と知り合う。
 彼は、夏休みに東京からおばの家に遊びに来ていたのであった。
 より子が、時計を取りに家に戻ると、やはり、義足の男が現れる。
 秘密の隠れ場所でやり過ごし、より子は、浩二と共に、東京に向かう。
 東京には、おじの息子、松本一郎が工員として働いていた。
 だが、彼は工員を辞め、愚連隊の一員となり、南東組に立てついていた。
 南東組に捕まった一郎を、より子は時計と交換に解放してもらおうとするのだが…。
 この時計の秘密とは…?
 そして、義足の男の正体は…?」

 いばら美喜先生の初期のペンネーム「藤咲のぼる」名義の長編ミステリーです。
 構成がしっかりしていて、中だるみすることなく読ませるところに、いばら先生の力量を窺わせます。
 あと、絵柄は素朴なタッチですが、女の子が可愛いと思います。(パンチラ、多めです。)

・注1
 引き揚げした時期が、五年前になったり、十年前になったりしていて、混乱します。
 とりあえず、この作品が描かれたのは、終戦から十年後の1955年頃?

・備考
 パラフィン紙貼り付け(一部、剥がしました)。前後の見返し、張り付き。

2021年7月29日 ページ作成・執筆

貸本・ひばり書房・リストに戻る

貸本ページに戻る

メインページに戻る