森由岐子「顔の皮をはがないで」(220円)
「唯一の肉親である父親を亡くした露木真悟は、父親の親友、倉田氏に引き取られる。
倉田夫妻には娘が二人おり、加津子は倉田氏の娘、そして、千世は再婚相手の連れ子であった。
加津子はハンサムな真悟に夢中になるが、もう一人の千世はほとんど姿を見せようとはしない。
真悟が家に移った日の夜、彼は、庭にある池の淵にたたずむ、着物姿の娘を目にする。
彼が挨拶しようと背後から声をかけると、娘の顔は白い仮面で覆われており、彼女はその場から逃げ出してしまう。
実は、千世は美しい娘であったが、交通事故で二目と見られぬ顔となり、以後、仮面をはずさず、別棟の小さな部屋に引きこもっていた。
真悟に一目惚れした千世は、現実で会うことができないのなら、せめて夢だけでも、と心から願う。
その願いが叶ったのか、毎夜、夢の中で、もとの美しい顔となった千世は、真悟と出会い、交流を深める。
不思議なことに、真悟も、彼女と同じ夢を見ており、二人の仲は急速に接近。
だが、千世は、真悟が自分の素顔を見たら、どう思うかを考えると、不安で不安で仕方がない。
ある夜、彼女は彼の寝室を訪れ、自分の仮面を取ってもいいか、彼に尋ねるのだが…」
まず、タイトルに偽りありで「顔の皮をはがさないで」ではなく、実際は「仮面をはがさないで」ですね。(顔の皮をはがそうとするワイルドな展開は全くありません。)
「白い仮面」でピンとくるとは思いますが、名画「顔のない眼」に影響を受けた作品のようです。
ただし、映画と違い、グロい描写はほとんどなく、表紙に「少女ムード・ミステリー」とあるように、ファンタジックな悲恋ものです。
一応、幽霊譚の要素はありますが、ホラーという程ではありません。
とは言え、仮面を付けたヒロインが薄気味悪いと言えば、薄気味悪くはありますが…。(最後まで、本当の素顔は見せず。)
ラストは勧善懲悪で締めてくれますし、徹頭徹尾、森由岐子先生らしい作品です。
・備考
ビニールカバー貼り付け、また、そのための歪みや痛みあり。糸綴じあり。下側に、そこまでひどくはないものの、水濡れのシミあり。巻末に貸本店のスタンプあり。後ろの遊び紙、ほとんど欠損。
2018年8月24日 ページ作成・執筆