森由岐子「怪談水化粧」(220円/1967年頃?)
「花村千之丞は、急逝した先代の遺言により、二十歳という若さで、花村流の家元を継ぐ。
しかし、千之丞は自分に舞踊の才能がないことを自覚しており、また、他の弟子達も千之丞を妬み、冷たい視線を向ける。
花村流の家元として、秋の発表会までに、千之丞は新しい振り付けを編み出さなければならないが、時は無情に流れるばかり。
千之丞はアイデアを求めて、名も知らぬ町を訪れ、そこである貸家を見つける。
そこは風流、かつ、大きなお屋敷で、美しい庭と泉があった。
千之丞はその屋敷を借り、爺やと小間使いの少女と住んで、新作舞踊の創作に励む。
ある日、千之丞が美しい泉のそばに佇んでいると、泉の底に美しい娘の姿を見る。
黒髪の、美しい娘は化粧をしており、その娘と見つめ合ううちに、千之丞は泉に吸い込まれるような感覚に襲われ、泉に倒れ込む。
危ないところを助け出された千之丞は、泉の中の娘の動きを新作舞踊に取り入れることにする。
が、途中までしかできず、もう一度、泉の中に娘の姿を見ようとするが、叶わない。
そのうちに、小間使いの少女と爺やが相次いで失踪、それでも、千之丞は独り、屋敷に住み続ける。
風の強い夜、雨戸を叩く音に、千之丞が表に出ると、そこには泉の中に見た娘が立っていた。
その夜から毎夜、千之丞は、若菜と名乗る娘と共に舞踊を舞い、新作舞踊は完成へと近づいていくのだが…」
・備考
状態、非常に悪し。ビニールカバー貼り付け、また、そのための歪みや痛みあり。糸綴じ穴あり。全体的に水濡れの痕あり。前後の遊び紙に書き込み、スタンプ等、多数あり。p47、鉛筆による落書きあり。pp69・70、113・114、欠損。
2016年3月24日 ページ作成・執筆