池川伸治「白い骸」(220円/1964年頃)



「朋茂は、親戚の秋子から手紙で呼び出される。
 その手紙には「私を助けて」とのみ書かれていた。
 家族が留守にしていたため、朋茂が屋敷の中で待っていると、秋子が現れる。
 二年ぶりに会う秋子は熱のために片足に障害を負い、松葉杖が手放せない身体になっていた。
 朋茂が手紙のことを問うと、秋子は殺されるかもしれないと話すものの、はっきりしたことはわからない。
 そのうちに、家族が帰って来て、秋子は姿を消す。
 陰気になった秋子と違い、両親と姉の月子は以前と変わらず、明るかった。
 ただし、話が秋子のことになると、皆、一様に暗い表情になり、話を避けたり、言葉を濁したりする。
 朋茂はしばらく滞在することとなるが、ある夜、秋子が雨の中、裏山にある「狐」と彫られた塚に祈りを捧げるのを目撃する。
 翌朝、月子から話を聞くと、秋子が拝んでいたのは、彼女の祖母が信仰していた「お狐様」であった。
 しかも、その塚に祈りを捧げると、不思議とその願いが叶うらしい。
 実際に、秋子が父親が死ぬよう祈った翌日、父親は心臓麻痺で急死。
 また、秋子に向かって「お狐様」の悪口を言った朋茂も危うく命を失いそうになる。
 あまりにおかしなことが続いたため、朋茂は屋敷を去ることを決意。
 だが、秋子は朋茂を必死になって制止し、自分は命を狙われていると訴える。
 実は、彼女はこの家の全財産を祖母から相続していたのであった。
 「お狐様」を信仰していた祖母は、家族にも信仰を押し付けようとしたが、家族からは反対され、ただ一人、信仰していた秋子に財産を相続させた。
 そのため、祖母は両親によって、いびり殺されてしまったと秋子は話す。
 朋茂は家の財産を母親達に渡し、三人仲良く暮らすよう提案するが、秋子は拒否。
 一方、母親は、秋子が隠し持っていた、家の権利書の居場所を知り、秋子の殺害を画策する…」

 なかなか面白いマンガです。
 注目すべきは「お狐様(お稲荷さん)」を扱っていることでありましょう。
 しかも、本文に挿入される「一寸休憩」にて「でたらめな神様」「狐をおがんで生活がよくなる筈がありません」(共にp78)と一刀両断。
 そればかりか、あまり一生懸命に拝むと、「狐に自分の命が感応して(…)《キツネツキ》といわれる精神異常者になってしまうともいわれて」(p79)いるそ〜な。(注1)
 実際、心霊マンガなんか読むと、「お稲荷様」関連は厄介みたいで、詰まる所、「触らぬ神に祟りなし」ってことなのかもしれません。
 そんな「お狐様」に「でたらめな神様」と喧嘩を売る度胸は流石と言うか、無謀と言うか…まあ、池川伸治先生らしい話と思います。
 ちなみに、このマンガ、さほど残酷描写は多くありませんが、ラスト付近で、サイアクなゾンビ映画の一つ「ゾンビ3」での「メイドさんの殺され方」ちっくな描写があります。
 中学生ぐらいの頃、ビデオで観て、ゲンナリした感覚が、云十年の時を経て、蘇りました…。

・注1
 この考えは、杉戸光史先生の「火娘の墓」等に影響を与えていると思います。
 両方とも「コ〜ン」「コ〜ン」喚きまくっておりますからね。

・備考
 状態、非常に悪し。カバー欠。鉄鋲にて綴じ。本文中、シミ、剥がれ、切れ、コマにかかる欠損、汚れ、水濡れ、多々あり。前後の遊び紙、ボロボロ。後ろの遊び紙に貸出票の貼り付けあり。

2017年4月12日 ページ作成・執筆

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