さがみゆき「鬼火の棲む家」(220円)

「十六才の美津江は、村はずれの林の中にある阿部屋敷に女中として勤めることとなる。
 よそ者の美津江は知らなかったが、阿部屋敷は別名「鬼火屋敷」とも呼ばれ、村人は誰も近寄ろうとしなかった。
 その屋敷には母親とその娘、お品。それから、年老いた女中のお藤と粗暴な使用人の辰吉の四人が暮らしていた。
 美津江が屋敷に参った初日、美津江は庭にある井戸の飛び込もうとして、お品が辰吉ともみ合うという騒動が起きる。
 とりあえず、落ち着いたお品は美津江を見ると、彼女のことを民江と呼び、「もうどこにもいかないでおくれ」と、すがりつく。
 母親にお品の気の済むようにと言われた、美津江だったが、お品はわざと美津江のことを民江として扱っているふしがある。
 また、美津江はお藤から屋敷のことをあれこれ詮索しない方がいいと忠告を受ける。
 お藤は、最後に「この家のひみつをしれば…この庭の古井戸の上に鬼火が燃える」と謎めいた言葉を付け加える。
 その言葉が気になり、好奇心から美津江が庭の古井戸に近づくと、突如、獰猛な犬に襲われる。
 それはこの家の番犬で、どうにか屋敷の中に逃げ込んだものの、美津江はこの屋敷から逃げることができないことをお品から知らされる。
 お品は自分も幽閉の身であることを明かし、美津江だけはこの屋敷から絶対の逃がすと誓う。
 ただし、それまでこの屋敷の秘密を探らないよう、言い残すのであった。
 その後、徐々に明らかになるお品の秘密…お品は自分の身体は私一人の生命ではないと言うのだが…。
 そして、雨の夜、美津江は古井戸の上で鬼火が燃えるのを見ることとなる…」

 ひばり書房の黒枠コミックスやヒバリ・ヒット・コミックスでも発売された、さがみゆき先生の代表作の一つです。
 ただ、貸本マンガの方は、非常にあっさりしておりまして、明らかに説明不足なところもあります。
 その点については、黒枠版「鬼火の棲む家」と比較を行っております。

 最後に、タイトルを「A House where live Jack-O'-Lantern」と英訳するセンスが流石!!であります。
「Jack-O'-Lantern」は「鬼火」の意味もありますが、アメリカ合衆国では、ハロウィンのカボチャの提灯のことです。
 鬼火を意味するのに「will-o'-the-wisp」という言葉もありますが、母国語でないので、ニュアンス等、さっぱりわかりません。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じ穴あり。読み癖あり。シミ、汚れ、裂け、非常に多し。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

2015年11月5日 ページ作成・執筆
2016年1月19日 加筆訂正

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