杉戸光史「恐れ島狂女」(220円)



「末期の肺癌を病んだ、画家の宮本光(注1)。
 彼は死に場所として、恐れ島の火口へ向かう。
 その途中、美しい着物姿の娘を見かけ、創作意欲が再燃。
 彼は絵のモデルになってもらおうと、娘の後を追うが、どうしても追いつけない。
 そのうちに、病の発作に襲われ、卒倒してしまう。
 彼を助けたのは、佐伯繁代という娘であった。
 光は彼女から恐れ島に関する話を聞く。
 昔、この島の守護神として七つ尾の白狐が祀られていた。
 だが、白狐は島で最も美しい娘を要求し、村人達が従わないと、崇りをなす。
 ある時、旅の僧侶が白狐と戦い、これを退治。
 白狐は七つ尾を切り離され、石になり、これは白狐神社の狐岩として今も残っていた。
 しかし、以来、島ではネズミがは大繁殖し、甚大な被害を受ける。
 そこで、島民達は、二十一日間、狐石に許しを請う儀式を行い、狐石に七つ尾をつなぎ、復活した白狐にネズミを退治してもらおうとしていた。
 光は、彼に恋した繁代や家の者に手厚い介護を受けるが、それよりも、見かけた娘の絵を完成させるのが最優先事項。
 だが、名前も住所もわからず、途方に暮れているところに、娘から手紙が投げ込まれる。
 そこには、今晩七時に白狐神社の狐石の前で会いたい旨、記されていた。
 約束の時刻、二人は再会する。
 奈々緒という名の娘は光に命を救ってくれるよう、白狐から救ってくれるよう懇願する。
 そのためには、白狐の復活を阻止しなければならないのだが…。
 ネズミを貪り食う、謎の娘、奈々緒の正体とは…?」

 杉戸光史先生は「とほほ…」な作品もありますが、当時の人気作家だけあって、今読んでも充分面白い作品も勿論、存在します。
 「恐れ島狂女」はなかなか面白く読めました。
 ラスト、多少、ムリヤリな説明や展開はありますが、全体的に整合性はあって、矛盾や支離滅裂な部分は皆無とは言いませんが、さほど目立ちません。
 更に、七つ尾の白狐がネズミの大群を飲み込むダイナミックな描写もあり、なかなか好調です。
 杉戸光史先生の描かれた貸本マンガの中で、代表作の一つだと思います。

・注1
 太陽プロの初期メンバーの一人、宮本光先生の名前を堂々と拝借しております。
 1960年代前半に、宮本光先生は宏文堂にて幾つか作品を物した後、数年のブランクを経て、1970年代(?)から、ひばり書房の黒枠単行本や三流劇画・エロ雑誌で再び作品を発表しております。
 その間のブランクに何をされていたのか、全く謎でして、詳しいことを御存知の方、おられませんでしょうか?

・備考
 状態悪し。ビニールカバー貼り付け。カバー痛み。糸綴じあり。読み癖あり。汚れ、シミ多々あり。後ろの遊び紙、貸出票貼り付け、及び、書き込みあり。

2017年12月20日 ページ作成・執筆

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