池川伸治「毒薬と三人娘」(220円)



「明子、佐代子、細子の三人は大の仲良し三人組。
 彼女達は一年上のクラスの男子生徒に興味を抱く。
 彼は最近東京から転校してきたばかりで、いつも独りぼっちであった。
 三人は相談の末、彼の下駄箱にどこそこで会いたい旨を書いた手紙を入れる。
 手紙に指定された時間と場所に現れた、久保田という少年は、少女達と友達になれることに大喜び、彼女達を家に招待する。
 週末、少女達が胸膨らませて、彼の家に向かうと、そこは小さなあばら家であった。
 少年はボロを着こみ、おやつはふかしたお芋。
 佐代子と細子は彼にあっさり幻滅して、こっそり帰ってしまう。
 しかし、明子は彼の人柄に魅力を感じ、彼のことは何も聞かずに、友達になることを約束する。
 明子はお礼に彼を自宅へ招く。
 当日、彼女の家に現れたのは、スーツでバッチリ決めた彼であった。
 ピアノも華麗に弾きこなし、礼儀作法も問題なし。
 もしかしたら本当はいいとこの坊ちゃんではないか、と判明すると、そっぽを向いていた佐代子と細子は180度態度を変える。
 改めて友達になった三人を、彼は東京の邸に招待する。
 外見は豪勢で三人はおったまげるが、中は廃墟同然であった。
 訝る三人は地下室に案内され、そこで食事をすることになるのだが…」

 読んでいて、デジャブ〜を感じていたのですが、実はこの作品、池川伸治先生の別のペンネーム、夏川ちさと名義の「いたずら娘」(160円/1962年1月1日完成)の結末を変えただけの作品です。
 p112まで、タイトルページを除いて、全て同じ。
 「いたずら娘」では「三人娘は、東京の邸を訪ねるものの、貧乏人嫌いの父親に叩き出される」という身も蓋もない結末でしたが、「毒薬と三人娘」では「少年は、両親を失い、零落しており、三人娘と無理心中を図るものの、爺やに謀られ、自分だけ毒を飲んでしまい、「死にたいやつは勝手に死ね」と棺桶に蹴り込まれる」という、これまた身も蓋もない結末となっております。
 いずれにせよ、池川伸治先生の「お金持ち」に対する「るさん・ちまん」をひしひしと感じますね。
 ただ、ちょっと結末が違うだけで、ほぼ同じ内容の本を、別タイトル・別ジャケットで出すというのは、どうかと思いますが…。
 まあ、ひばり書房らしい話だ・よ・ね〜。

・備考
 「毒薬と三人娘」〜ビニールカバー剥がし痕あり。カバー痛み。糸綴じの穴あり。背表紙色褪せ。後ろの遊び紙に貸出票の貼り付けあり。
 「いたずら娘」〜ビニールカバー剥がし痕あり。カバー痛み。糸綴じの穴あり。前の遊び紙、下隅に欠損あり。読み癖あり。シミや汚れ多し。後ろの遊び紙にスタンプと落書き(コックさん)あり。

2017年7月3日 ページ作成・執筆

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