池川伸治「殺子・殺子の母」(220円/1967年2月4日完成)



「春、新学期。
 美男子で女子生徒の憧れの的の立田真は、かおるという女生徒と知り合う。
 互いに惹かれ合う二人であったが、同じクラスの女生徒達は真にかおるに近づかないよう忠告する。
 かおるには殺子というあだ名があり、動物を殺す病気が持っていると言うのだ。
 その数、猫26匹、犬13匹、牛1頭、虫3000匹、鳥43羽。
 くだらぬ陰口と耳を貸さない真であったが、ある日、かおるによく似た少女を見かける。
 後をつけると、その女性は広大な墓地にて、多数の小さな墓に水をやっていたのである。
 その少女はかおるの妹の竹美であり、かおるの殺した動物の墓をつくり、供養していたのであった。
 竹美と真は出会った瞬間、互いに一目惚れしてしまう。
 二人は急速に親しくなるが、かおるが二人の仲に気付いた時、かおるの中の殺子が頭をもたげ始める…」

 唐沢俊一氏・監修「まんがの逆襲」(福武書店/1993年11月10日発行)にて紹介(p191)されたことがあり、インパクトの強いタイトルと相まって、(そのスジでは)知名度の高い作品です。
 でも、残酷描写やグロ描写は他の作品と較べて控えめで、基本的には「ラブ・ストーリー」なのです。
 殺子というだけあって、動物虐待描写がてんこ盛りかと思いきや、猫の死体一匹と犬の首吊り死体だけであります。(別に動物虐待を期待しているワケではないですよ。)
 その代わりと言ってはなんですが、登場人物のクセの強さはなかなかのもの。
 女性キャラよりも、「ワンパクでもいい」を地で行く、熱血漢の真の父親や、感情の起伏が非常に激しい真といった男性キャラが地に足がついてない感じで、変なストーリーをムダに盛り上げております。
 特に、右画像の真の描写は、ルイス・ブニュエル「エル」(墨/1952)の「主人公が教会で見る幻覚」シーンに肉薄する…ワケね〜だろ!!
 まあ、シュールと言えなくもないとは思いますが、それよりも「浮世離れ」していると形容した方がしっくりくるでしょうね。

 あと、本編中に、速・文/川辺フジオ・絵「新星にささげる詩」という文章が2ページ、挿入されております。
 起承転結のない、急転直下なストーリー、ただただおセンチです。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。本体、縛り癖あり。糸綴じあり。読み癖あり。目立つシミ、幾つかあり。後ろの遊び紙、貸出票の貼り付けあり。

2017年1月5日 ページ作成・執筆

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