松本洋子「ばらの葬列」(1986年4月5日第1刷・1989年9月20日第13刷発行)
収録作品
・「ばらの葬列」(「なかよし」昭和60年9月号掲載)
「三週間の旅行から家に帰ってきたレイは、ジュリア・モートンと出会う。
彼女は、レイの父親の知り合いの娘で、少しの間、預かっているのだと言う。
しかし、レイの父親は、ジュリアに人が近づくことにひどく神経質で、レイの親友ジェフにも家から去るように言う。
レイはジュリアに心魅かれ、父親のいない間に町に遊びに出るが、ジュリアは怪しい男達に連れ去られそうになる。
間一髪でジュリアを助け出したものの、ジェフはジュリアが二週間前の殺人事件に関係していることに気づく。
その事件では、ジュリアの母親が惨殺され、ジュリアは行方不明となっていた。
何故、レイの父親はジュリアを警察の保護下に置かずに、家に置いているのだろうか?
ジュリアの身に秘められた、恐ろしい秘密とは…」
・「闇の迷路」(「なかよしデラックス」昭和59年11月号掲載)
「疲れている父親にせがんでドライブに連れ出し、居眠り運転がもとで事故に遭ったナンシー。
傷は癒えたものの、罪悪感から視力は戻らないままだった。
邸に戻るものの、おばとその娘に邸のことを取り仕切られ、半ば軟禁状態に置かれる。
そこへ、以前の恋人だった貧乏学生のロジャーがナンシーの部屋に忍び込んでくる。
彼は、ナンシーに連絡を取ろうとしたものの、おばによって会うことができなかったのだった。
ロジャーに力づけられ、ナンシーは明るさを徐々に取り戻していく。
が、ナンシーの命を狙う企みがあるらしく、ロジャーはナンシーに彼の母親のもとに身を寄せるよう勧めるのだが…」
・「天使の疑惑」(「なかよし」昭和59年12月号掲載)
「エバは天真爛漫な女の子。
彼女の住む邸に、母の姉の娘、マリオンがフランスからやって来る。
赤ん坊の頃に父親を事故で亡くし、母親も亡くなったために、引き取られたと言う。
マリオンは美しい外見をしており、エバはマリオンを天使だと思う。
が、マリオンの本性が徐々に明らかになり、エバに醜い現実を突きつけるのだった…」
残酷描写はありませんが、関よしみ先生の作品に匹敵するトラウマ度です。
もしかすると、原作があるのかもしれませんが、それを差し置いても傑作だと思います。
とにもかくにも、「なかよし」の読者に読ませるものではないような…。
・「もうひとりのわたしへ…」(「なかよし」昭和60年11月号掲載)
「ジェニファーは、とろいが、明るく優しい女の子。
看護婦をしている母親の勤める病院で、病気の子供達と遊ぶのが、彼女の楽しみだった。
ある日、ジェニファーは突然、ラグビー部のエース、アーティに会う約束をすっぽかしたことを責められる。
が、ジェニファーにはそんな約束をした覚えはない。
人違いかと思っていたが、ジェニファーの気づかないうちに、もう一人のジェニファーの人格が行動しているらしい。
もう一人のジェニファーの正体は…?」
バリバリの少女マンガの絵柄なので、怪奇マンガでなければ、私は読むことはなかったでしょう。
内容は、ベテランの力量を見せ、どれもレベルが高いです。
その中で、「闇の迷路」「天使の疑惑」はなかなか読ませます。
これらの作品が「なかよし」読者に人間不信の芽を植えつけてないことを祈るばかりです。
平成27年5月17・19日 ページ作成・執筆