わたなべまさこ「黒天使シンセラ」(1984年12月14日第一刷発行)

 収録作品

・「黒天使シンセラ」(1974年/「週刊少女フレンド」掲載)
「part1」
 貧乏画家ポールとラナの間に産まれた、可愛い赤ん坊、シンセラ。
 温かい家庭を築こうとする二人であったが、身の周りでは異様なことばかり。
 ある夜、シンセラの正体を知ったポールは、シンセラを題材に「サタンの娘」という絵を描き上げる。
 その身の毛のよだつような絵は大反響を巻き起こし、ポールとラナは貧乏生活から抜け出すが、ポールは人間らしい心を失ってしまう。
 ラナの周囲では不幸な出来事が打ち続き、嘆く彼女にポールはシンセラの正体を明かす…。
「part2 愛と死のバラード」
 貧乏で、腕も三流の医者、グレスビーは、天才外科医と言われるカーマインに恋人のミニヨンを奪われ、どん底にあった。
 そんな時、コインロッカーで赤ん坊の腐乱死体を発見するが、驚くことに、赤ん坊はまだ生きていた。
 グレスビーが帰宅すると、先程の赤ん坊が現れ、彼にある提案をする。
 それは、金と恋人を手に入れる代わりに、彼の手で悪魔をたくさんつくるというものであった。
 やけっぱちになっているグレスビーはその提案を飲む。
 翌日、グレスビーとミニヨンが乗る、カーマインの運転する車が事故を起こす。
 カーマインは死亡、ミニヨンは顔にひどい傷を負い、その時、カーマインの両手がグレスビーのものと入れ替わる。
 グレスビーはミニヨンの顔の整形手術で大成功を収め、天才外科医の名をほしいままにする。
 その頃、新聞記事でコインロッカー・ベイビーのことを読んだラナはシンセラであることを気付き、精神病院から脱走。
 グレスビーのもとへ警告のために訪れるのだが…。
「part3 赤い館」
 アパートの火災で住むところを失ったジョージ=ライフと妻のリビアン、それに、双子の姉妹のディジイとスー。
 時を同じくして、カナダの遠い親戚から遺産として、家を一軒譲り受ける。
 渡りに船とその家に引っ越すと、思ったよりもいい造りで、一家は大喜び。
 しかし、引っ越した初日から、もともと空想癖の強いディジイの様子がおかしくなる。
 ディジイは屋根裏に、シンセラという赤ん坊がいると主張する。
 また、リビアンはある夜、納屋から赤ん坊の泣き声を耳にする。
 この家に潜むものの正体とは…?

・「水晶色の雨の色に」
「マルギットの恋人のアルマンは貧乏画家。
 アルマンが精魂傾けた絵が、パリ国際美術展にて見事、最優秀賞を獲得する。
 これから幸福な未来が開けると思った二人であったが、アルマンが酔っ払いを轢き殺したことから事態は暗転。
 賞は取り消され、失意のアルマンは毒薬で自殺してしまう。
 全てを失ったマルギットは、賞の取り消しを決定した審査員長のフィリップ=シュモルへの復讐を決意する…」

 「黒天使シンセラ」は意外なことに「オーメン」以前に描かれた作品であります。(「エクソシスト」の影響はあるようです。)(注1)
 インスピレーションのもとになったのは恐らく「ローズマリーの赤ちゃん」で、わたなべまさこ先生なりに悪魔の赤ちゃんのその後を描いてみたのでありましょう。(注2)
 母親の愛には弱い「悪魔の子」というキャラはかなり斬新だったように思います。
 ただ、どうも内容をうまく膨らませることができなかった様子で、中途半端な終わり方をしております。(打ち切りになったのでしょうか?)
 「聖ロザリンド」の翌年の作品で、グロ描写は相変わらず快調ですので、残念…。(残酷描写はきつく、「両目を鋏で突き刺す」描写なんかもあります。)

 「水晶色の雨の色に」は外国の短編をもとにしたのではないかと推測しております。(何の作品かはわかりません。)

・注1
 「part3 赤い館」は「悪魔の棲む家」を先取りしていたかも。(テキト〜言ってます。映画は大昔に観ただけなので、すっかり内容を忘れてます。)
 このエピソードの元になった小説もしくは映画は何なんだろう…?

・注2
 「ローズマリーの赤ちゃん」の続編として、アイラ・レヴィンは「ローズマリーの息子」という作品を書いてます。
 悪魔の子が成長してからの話のようですが、私は未読ですので、詳しいことはわかりません。

2017年1月31日・2月1日 ページ作成・執筆

講談社・リストに戻る

メインページに戻る