関よしみ「血を吸う教室」(1995年4月13日発行)
収録作品
・「血を吸う教室」(1994年「少女フレンド4月号増刊 サスペンス&ホラー特集号」)
「M市立X中学校。
卒業式の日、3年3組に集まった生徒達が見たのは、黒板に描かれた、磔にされたドクロの絵と「おまえたちは災いである 今日の裁きを受け入れよ」という言葉であった。
ざわめくクラスメートの前で、佐々木武志という男子生徒が、担任の女教師を刺殺する。
生徒達は教室から逃げようとするが、何故か、ドアも窓も塞がれ、教室から出られない。
これは全て、佐々木武志によるものであった。
PTA会長の息子、秋芳に一年間、陰惨ないじめを受け続けた彼は「神」に祈り、この日、いじめを見て見ぬ振りをし続けたクラスメート全員に裁きが下る。
彼らは「神」に十三人の魂を捧げなければ、この教室から出ることはできず、命を懸けたゲームを繰り広げることとなる。
生きて、この教室から脱出できるのは誰なのだろうか…?」
「バトル・ロワイヤル」がヒットした頃、「元祖・バトル・ロワイヤル」として復刻された名作です。
好き嫌いは(大いに)あるでしょうが、面白いです。
陳腐な表現でしょうが、極限状況の人間の心理をかなりうまくついているように思います。
とは言うものの、やはり問題のあり過ぎる内容でしょうね。
・「堕天使の子守唄」
「藤井理緒は中学生なのに髪を染め、万引きだってへっちゃらのヤンキー娘。
しかし、補導された彼女のもとに向かう途中、両親が事故死してしまい、三兄妹(友哉、理緒、結花)は孤児となってしまう。
親戚達の要望で、母親のいとこの唐沢家に、彼らは引き取られる。
唐沢家の当主は、病院をいくつも経営している実業家で、大変な資産家。
彼には早くに母親を亡くした藻音(もね)という娘がいた。
屋敷の離れに引っ越してきた理緒達だが、そこで唐沢家の異常さを目の当たりにすることとなる…」
関よしみ先生の「くたばれ、ヤンキー!!」というメッセージがびんびんと伝わってきます。(私もそう思います。)
そのせいでしょうか、主人公になかなか感情移入というものができないまま、事態は悪い方向に突っ走っていきます。
何も救われずに、読後の印象は「チョベリバ〜」の一言であります。
・「血染めの美学」
「美術部の鷹神勇輝は、若いうちから天才と言われる、イケメン高校生。
勇輝の恋人が版画用プレス機で頭を潰されて殺されてから、早くもその後釜を美術部の女子部員が狙う。
内田万里亜も、勇輝のことが好きだったが、ふとしたきっかけで、勇輝と接近。
彼は、自分と基本的な価値観が同じで、創作意欲を刺激してくれるような女性を求めていると言う。
そんな彼は、動物の轢死体にも、交通事故の犠牲者にも、病院での解剖死体にも「美」を見出す。
勇輝に憧れる万里亜は、勇輝と同じ価値観を持つために、そして、彼ともっと親しくなるために「美」を追求しようとする…」
関よしみ版「カラー・ミー・ブラッド・レッド」(米・1965年・ハーシェル・ゴードン・ルイス監督/そのスジには有名な映画ですが、ク○です)。
このマンガに出てくる鷹神勇輝を見ると、同じく猪突猛進型だった故・池川伸治先生を連想してしまいます。
関よしみ先生と池川伸治先生は根深いところで共通項があると思うのですが、ぶっちゃけますと、良くも悪くも「極端」なんですよね。
そこが魅力でもあり、欠点でもある…諸刃の剣ということでしょうか。
あと、頸動脈から血を噴射させて、ジャクソン・ポロックばりのアクション・ペインティングをする画家のマンガ、誰か描いてみませんか?
関よしみ先生が自分のスタイルを確立した傑作ぞろいの単行本です。
この迫力は今でも色褪せません。
2015年3月23・24日 ページ作成・執筆
2020年10月2日 加筆訂正