犬木加奈子「犬木加奈子の血まみれ絵本」(1996年8月9日第1刷発行)

 収録作品

・「たのしい自由研究」
「夏休みも終わり間近。
 遊びほうけてきた少女達にとっては自由研究が頭痛の種。
 そんな彼女達はSデパートの13階の噂を聞く。
 出かけてみると、そこは特別標本売り場であった。
 少女達は手っ取り早く宿題用の標本を買って済まそうとするのだが…」

・「おともだち」
「ヤー子は自分勝手で意地悪な少女。
 皆の鼻つまみ者の彼女は、ずっといい友達をつくろうとする。
 ある日、彼女が公園で変な花を触ると、トゲから毒が入り、右手が腫れ上がる。
 傷は膿み、彼女が手の甲を掻き毟ると、そこにぽっかり穴が開く。
 すると、目鼻口のように開いた、その傷口が、ヤー子に話しかけてくる。
 ヤー子は、それと友達になるのだが…」

・「かぐやひめ」
「山奥で拾われ、平凡な老夫婦に育てられたヒメ子。
 15歳になった彼女は人間離れした美貌に恵まれ、男達は彼女に夢中。
 だが、老夫婦は彼らを決してヒメ子に近づけさせない。
 こういった経緯から自分をかぐや姫だと彼女は考える。
 そして、満月の夜を迎えるのだが…」

・「たのしいクリスマス」
「キキの姉は、キキに意地悪ばかり。
 自分の悪戯をすぐにキキのせいにするし、キキの人形もすぐに壊してしまう。
 クリスマスの夜、キキのもとにサンタクロースが訪れる。
 サンタクロースの贈り物は、姉にそっくりな人形であった。
 姉は早速その人形に目を付けるのだが…」

・「待っている……」
「街角の小さなタバコ屋付近。
 私は空きっ腹を抱えて立っている。
 なのに、誰もかれも知らん顔。
 ある日暮、女子学生が二人、私の方に寄って来て…」

・「蟻の巣」
「コンクリート舗装の隙間にある、蟻の巣を見つけた姉妹。
 姉妹は、蟻の巣を掘り出し、女王蟻や働き蟻を瓶に閉じ込めて、アパートの部屋に持ち帰る。
 どんな巣を作るか、楽しみにしながら、姉妹は眠りに就くが、姉は奇妙な夢を見る。
 彼女が見た夢とは…」

・「たのしい誕生日」
「両親に過保護なまでに大事に育てられた少女。
 そのため、すっかり横暴なわがまま娘に成長してしまうが、両親はただただオロオロするばかり。
 それが面白く、ますます増長した彼女は、外でも悪友達と共に遊びまわり、悪事を重ねる。
 ただ、不思議なことに、相手がいくら怒っても、母親がある紙を見せると、治まるのだった。
 そして、迎えた誕生日…」

・「ずる休み」
「ルン子は、夜更かしして眠いし、宿題もやってないはで、学校に行きたくない。
 そこで、母親に風邪のふりをして、ずる休みをしようとする。
 母親はルン子の仮病にだまされ、医者に電話。
 ルン子がその電話に聞き耳を立てていると、母親は子供の間で流行っている重い病気について話していた。
 その病気の症状とは…」

・「食卓の悪夢」
「おいしいものが食べたくて仕方がない、食いしん坊の少女、ルリ子。
 いい匂いに惹かれ、彼女はあるレストランへ入る。
 そこでは彼女のための料理ができ上がったばかりであった。
 その料理は最高においしく、彼女は夢中になって食べる。
 料理人に何の肉か尋ねると、これは植物の仲間と教えられる。
 次に、料理人はその植物の身を持ってくるが、実に変わった果物であった。
 その植物の正体とは…?」

 犬木加奈子先生の怪奇マンガの初期の未発表作品を集めた短編集と思います。
 初期は、ストレートな怪奇マンガが多く、「raw」な絵柄と相まって「ゲロゲロ」の「グログロ」なのですが、オール・カラーがそれに幾重も輪をかけて、「ドクドクしさ」に昇華されるという、まあ、なんちゅ〜か、エラいことになってます。
 いや〜、色付きの犬木先生の怪奇マンガ、も〜っ、サイコ〜っ!!
 個人的なお気に入りは、「たのしいクリスマス」と「たのしい誕生日」」「食卓の悪夢」です。
 「たのしい誕生日」は星新一のショートショート(タイトル忘れ、「ボッコちゃん」収録/臓器移植のために育てられていた青年の話)と、藤子・F・不二雄先生の傑作「ミノタウルスの皿」を彷彿させるところが興味深かったです。
 あと、巻末に綴じ込み付録がついているのですが、未開封のため、中身を確認できておりません。(気にはなりますが、開封する勇気がありません…。)

2017年6月21日 ページ作成・執筆

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