蕪木彩子「生体人形」(1995年10月13日第1刷発行)
収録作品
・「生体人形」
「新進気鋭の人形作家、風間光彦。
ある時から作風が一変したが、彼が作る人形には生命が宿っているかのようであった。
人形作家に憧れる、白石ゆきは、彼と知り合い、アトリエを訪れるようになる。
アトリエには、彼の作った人形と共に、赤子の人形を抱いた、等身大の美しい女性の人形が飾られていた。
ゆきは、創作日記から、彼の妻が、赤子と無理心中をしてから、作風が変化したことを知る。
日記に書かれている「土に還す」という言葉の意味とは…?」
・「切り裂かれた失踪」
「雪深い山村に向かう和夫と美沙。
和夫は、美沙の姉、千恵子の夫であり、千恵子の出産の知らせを受け、出稼ぎ先から帰省するところであった。
途中、二人は、雪道で足首を捻挫した記者、羽賀邦彦と出会い、彼を和夫の家につれて帰る。
だが、家には、赤ん坊はいるのに、千恵子の姿はない。
両親に聞いても、子供を産んだ後、失踪し、行方がわからないと言う。
更に、数年前から村に居ついた、イタコ出身の「生神様」は、いずれ解決するから、捜すな、とのお告げを出していた。
美沙は、姉が赤ん坊を置いて、姿を消すとはどうしても考えられない。
三日後、美沙は、羽賀邦彦と共に「生神様」に姉の行方を占ってもらいに行くのだが…。
千恵子に一体何が起こったのであろうか…?」
・「殺さなくちゃ」
「星野安奈は、兄の竜一とマンションで二人暮らし。
竜一は、婚約者だった詠子に捨てられて以来、尻軽な女性に憎悪を抱いていた。
ある日、安奈は、詠子が、連続女性殺人事件の犯人であることを知る。
しかも、詠子は、しばしば竜一の部屋を訪ね、彼と話をしているようなのだが…」
・「私を孕む」
「るみは、根暗で内気な少女。
彼女は、自分の中に「本当の私」が育ちつつあることを感じていた。
「本当の私」は何の汚れもなく、清楚で美しい。
彼女が呼びかけると、その声に応え、腹部にその顔が浮かび上がる。
彼女の生まれ変わる時とは…?」
・「女髪」(「ホラーハウス」1989年5月号)
「織江の母親は、義母であった。
織江の母親は、織江が小学生の頃、父親から離婚を乞われ、自分の髪を断った後に、自殺していた。
そういう悲劇を経ながらも、一家は仲良く暮らしていた。
織江が高校に入学した頃、櫛に自分のものでない髪がまとわりつき、寝室に髪がまき散らかされるという出来事が起きる。
それは、織江の母親の遺品である髪の毛であり、夢遊状態の織江がやったことであった。。
織江が母親の記憶を取り戻した時、「黒髪」に宿った女の怨恨が、時を経て、惨劇を巻き起こす…」
・「死臭の森」
「自殺するために、奥深い森に立ち入る、若いカップル。
娘には、死者達の後悔や嘆きの声が聞こえてくる。
首を吊った女子学生の声…。
家族に殺され、バラバラにされて、埋められた父親の声…。
死者達の声を聞いて、彼女は森を出て、やりなおしたいと思うのだが…」
・「怪しいアパート」(「生体人形」の単行本への描き下ろし)
「蕪木彩子先生自身が体験した、心霊現象多発のアパートでの怪奇談」
2018年10月31日 ページ作成・執筆
2019年8月28日 加筆訂正