東堂洸子「閉じられた胎胞」(1991年8月8日第一刷発行)
・「閉じられた胎胞」
「井沢千加は親友の奥寺恭子から妊娠を知らされ、ショックを受ける。
相手は由隆という男だが、恭子は高校を退学しても、赤ん坊を産むと決意していた。
恭子は赤ん坊のことを考えて、嬉しそうにしているが、千加はそんな彼女とどう接していいか悩む。
ある時、クラスメートに相談したところ、このことがクラス中に広がって、恭子は退学となる。
千加は恭子に謝りに行くが、恭子はすっかり逆上しており、立ち去ろうとしたところを電車に轢かれてしまう。
以来、恭子の霊が千加の前に現れるようになり…」
・「恐怖の宴 魂鎮めの祭り」
「浅野里子は高校生。
彼女の住む村には巨大なブナのご神木があった。
言い伝えによると、この神はもとは人で、山を守るために、身を捧げたという。
村では毎年、鎮守の祭りが行われ、祭の晩にはタマ(魂)が降ると伝えられていた。
一方、このご神木は村人達に恐れられ、近づく者は神主以外はいない。
というのも、悪さをする者は皆、行方不明になっており、十年前、里子の知り合いの男児もその犠牲者の一人であった。
ある年、祭りを前にしてブナ神に異変が起こる。
ブナ神が光り出し、神主たちが調べたところ、中が腐っており、どうやら寿命らしい。
ところが、神主たちが行方不明になり、とりあえず、神主の息子が祭りを行い、「神送り」をして、ブナを切り倒すことが決まる。
その晩、里子の祖母は、就寝中の里子の枕元にブナ神の娘を視る。
彼女は里子の身体を「憑坐(よりまし)」として欲していた。
祖母は里子を守ろうとするが…」
・「十六夜(いざよい)」
「倭住(いずみ)宮子は旧家の出身。
倭住家は代々この近隣一帯を治めた庄屋の家柄であったが、戦後、没落する。
だが、祖母はプライドだけは高く、男尊女卑の塊であった。
宮子には弟の竹生がおり、産まれてすぐに亡くなるが、それでも、祖母は竹生のことにのみこだわり、宮子のことは眼中になかった。
彼女が東京に出て三年、母親から祖母が倒れたと連絡がくる。
倭住家に戻ると、祖母の口の悪さは相変わらずで、彼女のそばには死んだはずの竹生がいた。
彼は立派な跡継ぎにするため、よそで育てられていたという。
宮子はさっさと家を出ようとするが、竹生に引き留められる。
彼は姉に会うことを心の底から望んできた。
だが、竹生の考えることは祖母にそっくりで、母親に対してすら軽蔑の念を隠さない。
その夜、祖母が危篤になるが…」
・「マタニティ・クライシス 赤い瞳」
「奈緒美はお腹のかなり大きくなった妊婦。
彼女は夫から飼い猫のミミを中絶手術を受けさせるよう言われていた。
とは言え、同じ妊娠した身で、とてもその気になれない。
しかも、ミミは病院に連れて行こうとしても、いつも逃げてしまう。
だが、ミミは隣家の鈴木家に忍び込み、問題を起こす。
そこの奥さんは大の猫嫌いなことに加え、赤ん坊がいた。
ある日、ミミが赤ん坊のそばにいるのを見つけ、鈴木家の奥さんは大激怒。
奈緒美はそのままミミを病院に連れて行き、中絶手術を受けさせる。
でも、奈緒美はミミが怖くて仕方がない。
夫に頼み、保健所にミミを引き取ってもらおうとするのだが…」
・「莅莅の泣く夜」
「吹雪の夜。
笠井高晃は旅先で道に迷い、小さな旅館を発見する。
その旅館には藤枝という美しい女性と、アル中らしい母親がいた。
高晃は腹黒いプレイボーイで、藤枝に目を付け、彼女を町に連れて行こうと考える。
純情な藤枝は彼の口車にあっさり騙され、置手紙を残し、家出をする。
しかし、彼のマンションには別の女がおり、一悶着が起こる。
翌朝、藤枝の姿は彼の部屋から消えるが、彼女の彼への想いは本物であった…」
・「東堂洸子の恐怖ストーリー」
東堂洸子先生の体験した奇怪な体験や心霊体験の三話立て。
「ホラーハウス」(大陸書房)で掲載された作品を主に収録しているようです。
「マタニティ・クライシス 赤い瞳」「莅莅の泣く夜」はセックス・シーンがもろにあるので、レディース・コミックかもしれません。
表題作の「閉じられた胎胞」からして非常に生臭い内容で、講談社のコミック・ミステリーの中では最もアダルト・テイストの濃い一冊だと思います。
2023年7月27・28日 ページ作成・執筆