谷間夢路「絶叫大予言」(1996年4月12日発行)

 収録作品

・「大予言」(「月刊少女フレンド1995年9月号増刊 サスペンス&ホラー」掲載)
「由理の町に予言者が現れた。
 ごみ袋に穴を開けたものを着込み、つるっ禿げで、ハンディタイプのカラオケ・マイクで替え歌(?)を歌いながら、予言するという、キ○○イ親父であった。
 しかし、この親父の予言はことごとく的中する。
 予言どおりに、地球は滅亡するのだろうか…?」

・「続・大予言」(「月刊少女フレンド1996年1月号増刊 サスペンス&ホラー」掲載)
「泉由起の通う学校は山合いにあった。
 頻繁に地震が起こっているところへ、あの予言者のキ○○イ親父が現れ、大地震が起こると警告する。
 その翌日、大地震が発生し、由起達は地下に閉じ込められるが、その大地震の真の正体とは…?」

・「夢路の脳爆科学読本」
 第一話 窓辺の少女
「青年が通学途中に通りかかるお邸。  その邸の二階の窓から、彼に微笑みかけ、手を振る少女。
 青年は少女とお近づきになろうとするものの、彼女の父親は邸に誰も近づけようとしない。
 父親に軟禁されていると考えた青年は、少女を助けるため、二階に忍び込むが…」
 第二話 宇宙の母は強かった
「有名な宇宙飛行士だった母親は、父親の言うことには逆らえない。と言うのも…」
 第三話 河に魚が帰ってきた
「ゴミで溢れ、排水で汚れまくった川…そこはもう魚の棲める環境でない。
 そのことを憂いた科学者は、公害に強い魚をつくり、川を再び魚でいっぱいにしようと努力する。
 彼は、汚れた川の水を飲ませた娘の血を魚に注射して、公害に対する耐性をつけさせようとするが…」

・「異様島漂流記」
「春休み。アドベンチャークラブの顧問の男教師と女生徒三人は、イカダが沖に流されてしまい、漂流。
 幾日かの漂流の後、孤島にたどり着く。
 島はフナムシが繁殖し、島の中央部には今までの漂流者のものらしき骸骨が大量に見つかる。
 が、水も食料もかつがつあり、救助が来るまで孤島ライフを楽しむことにする女生徒達。
 そんな彼女達に魔の手が伸びようとしていた…」
 p98は「ミュータント 人類改造計画」(1980年/米)からの流用と見ましたが、どうでしょうか? 昔、観たかった映画でありましたが、置いてあるビデオ・レンタルがありませんでした。

・「ああ異状 レ・ミゼラブル外伝」
「父親は倒産が原因で自殺、その後、母も自殺してしまった少女。
 彼女が両親の墓参りに出かけると、墓石の下敷きになって、もがいている中年男を発見する。
 少女が男を助け出すと、その場に刑事と修道女達が駆けつけてきて、その男は下着泥棒だと言う。
 しかし、男が持っていたのは、神父のガラパンだけ。
 そこへ現れた神父は、そのパンツは自分がその男に与えたもので、修道女の下着は風に飛ばされたのだろうと言って、場を収める。
 少女が、今や親戚のものとなっている家に帰ると、彼女の鞄から下着が出てきて、親戚は彼女を罰するために、頭をつるつるに剃りあげる。
 悲嘆に暮れる少女のもとに、昼間の下着泥棒の親父が現れ、お詫びに、親戚をこの家から追い出そうと言う。
 ただし、その現場は決して見ないことを条件に…」

・「海の子山の子巷の子」
 第一話 あなおそろしや海の子
「いつも不良達のカツアゲの対象になっている、内気で口下手な少女。
 彼女は、自分の気持ちをはっきりと言うため、また、カツアゲから自分を守ってくれる先輩に自分の気持ちを打ち明けるため、すらすら話すようになりたいと願う。
 少女はある日、浜辺で瓶に入った、謎の生物を発見する。
 家に持って帰って見ていると、その生物が舌に張り付いてしまうが、それ以降、少女はうまく舌が回るようになる…」
 第二話 あなおそろしや山の子
「家でも学校でもいじめられている少女。
 彼女の趣味を、誰も彼女を理解してくれない。
 彼女は自殺するため、樹海に入るが、そこで老婆に親切にされ、一晩老婆の家に泊ることになるが…」
 第三話 あなおそろしや巷の子
「ピアノの女教師は、自分が勤めている家庭の後妻になりたいが、年頃の娘が邪魔だった。
 女教師は、娘に対するいじめを日増しにエスカレートさせ、遂にはピアノにガソリンぶっかけて燃やしてしまうが…」

・「ある朝、起きたら…」
「少女が朝、目覚めたら、彼女はペットの猫に寄生するノミに変身していた。
 その日は、両親が留守で、彼女はボーイフレンドを家に呼ぶことになっており、彼は彼女に気づかず、彼女の部屋に入る…」

・「嗚呼!! 悲しみの岩窟少女」
「万引きの冤罪により、孤島の全寮制の学校に送られる少女。
 そこの教師から、彼女は虐待を受けまくる。
 島から脱走しようとした少女は、発見され、海のそばの洞窟に閉じ込められる。  潮が満ち、洞窟内はどんどん水位が上がる…」

 怪奇マンガと一言で申しましても、種々様々な作品があります。
 本格的なものから、猟奇やスプラッター、サイコ・サスペンス、耽美系、オカルト、伝奇もの、ファンタジーと細かくジャンルわけをしていくと、際限がありません。
 また、偉大さ故に、漫画家御本人がジャンルそのものになっていることもありまして、水木しげる先生、楳図かずお先生、日野日出志先生などはその最たるものでありましょう。
 この欄でご紹介する、谷間夢路先生もまさに一つのジャンルを形成しているように思えます。
 谷間夢路先生は、貸本時代からマンガを描き、長年、エロ・マンガを中心に活躍してきたキャリアを持ち、1980年代頃から怪奇マンガの世界に入ってからも、第一線で活動した大ベテランであります。
 ただし、ジャンルを形成している理由は、経歴や影響力云々よりも、作品があまりに「個性的」であるが故にです。
 この「個性的」という言葉をもっとわかりやすく言うと、「テキト〜」なのであります。
 谷間夢路先生の怪奇マンガは、私の読んだ限り、どれもメチャクチャでテキト〜、非常に緩〜いものです。
 妙にコケティッシュな女の子が、1980年代に流行ったスプラッター映画の写真から複写されたと思しき絵の中を右往左往するというのが基本的なスタイルでして、ストーリーに大した意味はありません。あまりにテキト〜で、ギャグとしか思えない作品も多々あります。
 私も最初に読んだ時には、眉をひそめたものでありました。
 しかし、最近になって、なかなか面白いんじゃないの…と、考えが徐々に変わってきたのであります。
 他のマンガ家からの影響を感じさせない(し、誰も多分、真似をしようとしない)徹底して独特のマンガ、言うなれば、「オンリー・ワン」。絵も発想も、常人には考え付かないマンガであります。こういうマンガを十年以上描き続けてきたというのは、やはり賞賛に値するでしょう。
 そのことを私は「絶叫大予言」を読んで、改めて確認いたしました。
 これは凄いマンガです。まさしく「diabolic one」!!
 機会があれば、読んでみることをお勧めしますが、プレミア価格で入手しようなどと考えないよう警告しておきます。

平成27年2月11・12日 ページ作成・執筆

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