たちばな梓「死神ドール」(2012年8月10日初版発行)

・「case1」
「中学一年生の近藤鈴香はクラスでひどいいじめにあっていた。
 彼女には伊東マユという小学校からの親友がいたが、中学進学を機に別のクラスになり、疎遠になる。
 ある日、鈴香が友達が欲しいと強く願うと、突如、部屋のパソコンが起動する。
 パソコンの画面には「FRIEND DOLL」というサイトが表示され、「好みの人形を選んで下さい。その人形が、あなたに素敵な友達を導いてくれるでしょう。」という紹介文があった。
 サイトに入ると可愛らしい人形がたくさん紹介されるが、「人形は1体1体意思を持って」おり、「代金は彼女達が決める」という。
 鈴香は尻込みするも、「AIRA」という美しい西洋人形に心を掴まれ、これを選択し、「友達が欲しい」と希望を書き込む。
 すると、「マッテテネ」という言葉と共にパソコンが急にシャットダウンする。
 翌日、帰宅すると、彼女のもとに「AIRA」の人形が届けられる。
 更に、彼女のクラスに「美神アイラ」という非常にきれいな娘が転入してくる。
 アイラはあの人形にそっくりで、彼女は鈴香の友達となる。
 だが、いじめっ子たちがだまっているはずがなかった。
 鈴香がいじめられそうなところを昔の親友の伊東マユが助け、鈴香とマユは友情を取り戻す。
 鈴香はアイラにマユを紹介するが、マユは良い顔をしない。
 しかも、マユはアイラの恐ろしい秘密を知ってしまい…」

・「case2」
「水野幸はガリ勉少女。
 彼女は親の期待に応えるべく、全てを犠牲にして勉強に励むが、決して報われることはない。
 その苛立ちを彼女はミミという兎のぬいぐるみにぶつける。
 ミミは彼女が小さい頃、友達を作るのが苦手な彼女に父親が買ってくれたものであった。
 ある夜、彼女の夢の中にツインテールの少女が現れる。
 彼女はぬいぐるみのミミで、幸を助けに来たと話す。
 ミミは明日の放課後、教室で英語の参考書を読みながら過ごすよう勧め、その通りにすると、幸が憧れていた坂下と話す機会を得る。
 更に、ミミはテストの内容まで教えてくれ、勉強せずとも満点が取れるようになる。
 幸は自由を楽しむが、坂下と仲が良くなったことで、彼の恋人の華奈に文句を言われる。
 幸はミミに恋のアドバイスを求めながら、眠りに就くのだが…」

・「case3」
「美術部の向井珠希は亮司先輩に憧れていた。
 だが、彼の恋人は未花先輩で、この二人はお似合いのカップルで、入り込む隙はない。
 ある夜、珠希がパソコンでチャットをしていると、見知らぬ人から「願いを叶える人形があります。興味ありますか?」というメッセージが届く。
 一応、どんな人形か尋ねると、「代金はいりませんが、願いを叶えるためには、大切なものと引き換えになります。」とのことで実に怪しい。
 それでも、珠希は亮司先輩のことがあきらめきれず、人形を注文する。
 翌日、帰宅すると、彼女のもとに小さなクマのぬいぐるみが届く。
 「大切に身につけておかないと効果がでません。」と注意書きがあり、一週間、身につけていたところ、亮司と未花が別れたことを知る。
 このチャンスに珠希が亮司に告白すると、あっさりとOKが出て、二人は付き合い始める。
 珠希は幸せな日々を送るが、次第に違和感を感じるようになる。
 亮司は彼女が勝手に容姿を変えることを許さなかった。
 珠希は自分が未花先輩の身代わりにされているのではないかと考えるのだが…」

・「case4」
「野島啓哉は影のある高校生。
 彼は二年前のクリスマス、妹の乃愛を一人にした間に妹を交通事故で亡くしていた。
 彼は自分のせいだとずっと悔やみ、妹の形見の西洋人形を仏壇に飾っていた。
 そんな彼に莉瑚という少女が想いを寄せる。
 彼女が本を借りることを口実に彼の家を訪ねると、「邪魔しないで」という声が聞こえ、部屋のドアの隙間から人形が彼女を見ていた。
 その部屋は乃愛の部屋で、啓哉が見た時には人形はない。
 莉瑚は仕方なく帰ることとなるが、帰り道にあの人形が現れ、交通事故にあいそうになる。
 彼女は乃愛のことを知り、翌日、また啓哉の家を訪れる。
 彼女は啓哉に自分を責める必要がないことを訴えるが、そこに再び乃愛の人形が現われ…」

 ホラーが苦手なたちばな梓先生による人形をテーマにしたホラー連作集です。
 「case1」たちばな梓先生がホラーに挑戦した最初の作品ですが、きっちりとステキなホラー作品に仕上がっております。
 どの作品も出来は良いのですが(バッド・エンド率高め!!)、「case4」は人形の霊の行動が一貫してないように思えてイマイチに感じました。
 個人的ベストは凝った設定の「case3」。
 ただ、クマのぬいぐるみに仕掛けられていたモノの正体がちと安直かも…。

2024年12月19・21日 ページ作成・執筆

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