関よしみ「魔少女のおもちゃ箱」(1992年7月13日発行)

 収録作品

・「魔少女のおもちゃ箱」
「スキー合宿で雪崩に巻き込まれた高校生の男女二組。早苗、強志、綾子、雄太。
 彼らが目覚めると、雪の中に孤立した屋敷の中にいた。
 屋敷には、老人と幼い孫娘、みゆきの二人。老人が彼らを助けてくれたのだと言う。
 雄太は雪崩に巻き込まれた際に死亡、早苗も足を骨折してしまう。
 猛吹雪の中、彼らは孤立し、みゆきの遊びに付き合わされるが、どこか様子がおかしい。
 病弱な体質故、友達に恵まれなかったみゆきの友達は手足のない猫や羽や脚をむしられたゴキブリであった。
 彼らはみゆきの友達として、ずっと家にいることを約束させられる。
 軟禁状態に置かれた彼らはどうにかして外部と接触しようとするが…」
 強志の死体が「13日の金曜日」でありまして、1980年代前半のスプラッター映画の洗礼を受けた、おっさんには、感慨深いものがありました。
 なお、関先生にお話しを伺ったところ、この作品は、わたなべまさこ先生の「聖ロザリンド」と、スティーブン・キングの「ミザリー」を下敷きにして描くよう、当時の担当の編集者に指示されたとのことです。
 そして、この作品が人気を得たことにより、屈指のトラウマ・マンガ「魔少女転生」に発展したことです。
 ちなみに、「魔少女」という言葉は編集さんが考えたらしいとのこと。
 関先生を担当していた編集者は、こいわ美保子先生も担当していたとのことで、「真夜中のシンデレラ」と「魔少女転生」の間に共通点が多い理由がようやく明らかになりました。


・「霧の底」
「嵐に遭い、若者達を乗せたヨットが遭難。
 沈没寸前のヨットが漂着したのは、霧に包まれた島だった。
 喉の渇きと飢えに苦しむ彼らは、島のあちこちで卵を見つける。
 が、卵を食べた男は血を吐いて、死亡。
 島を捜索するが、巨大な鳥とその卵があるだけで、食料らしきものは一切見当たらない。
 その時に、彼らは難破船の壁に書かれた「卵を食べるな 鳥を殺すな」というメッセージを発見する。
 飢えに苦しむ中で、彼らは島の秘密を知ることになるのだった…」
『マタンゴ』スタイルの作品の中では、最高傑作の一つでしょう。
 この作品ではキノコになるのでなく、ハーピーになるという設定をしておりますので、幾多ある二番煎じに陥らず、非常に新鮮です。(諸星大二郎先生の影響があるかも…?)
 ちなみに、私、コレ、年少の頃に読んだことがあります…。この単行本を読んだ時に、一発で記憶が蘇りました。うわ〜…。
 名作です。断言します。

・「悪夢へいらっしゃい」
「夏休みのある夜、亜湖は人気歌手がファンの手によって八つ裂きにされる夢を見る。
 翌日、その人気歌手は駅のホームから転落して、轢死した。
 数日後、亜湖は、友人の飼い犬を誤って尻で押し潰してしまうという夢を見る。
 その翌日に、その犬は車に轢かれ、ぺちゃんこになってしまうのだった。
 今度は、友人の男友達が森で落雷に遭う夢を見るが、彼は浴槽にドライヤーを落として感電死。
 亜湖は自分の夢が実現することに気づき、なるべく眠らないように努力するが、睡魔は容赦なく襲い掛かってくる。
 次に彼女が見る夢は…」

「シチュエーション・ホラー」(極限状態によるパニックを描いたもの)の名手と言われる関よしみ先生ですが、オーソドックスなホラー短編でも良質な作品が多くあります。
 この「魔少女のおもちゃ箱」は、その中でも粒よりな作品で占められていて、怪奇マンガが好きで、グロ耐性のある方には手放しでお勧めできます。
 二大名作「霧の底」「悪夢へいらっしゃい」は必読…と言いたい所ですが、読んで昔のイヤな記憶が蘇ったと文句を言われそうなので、興味のある人だけどうぞ。

2015年3月15日 ページ作成・執筆
2018年6月11日 加筆訂正

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