菊川近子「瞳の中の悪魔」(1990年10月13日第1刷発行)
収録作品
・「ゆがんだ視線」(「昭和62年発行 ハローフレンド10月号」所載)
「里花子は、フランス旅行から帰ってきた由実のマンションを訪ねる。
が、里花子は由実に重なるように奇妙な老婆の姿を視る。
由実の母親が言うには、由実はフランス旅行以来、記憶を失い、それだけでなく、全くの別の人間と言っていいほど、変わってしまった。
どうもフランスの蚤の市で、老婆からトファナ水という毒薬を買った時から、おかしくなったらしい。
その夜、里花子の前に、由実の霊体が現れ、自分は催眠術によって老婆に身体を奪われたと告げる。
翌日、由実の母親が危篤状態に陥り、里花子の家で由実をしばらく預かることとなる…」
・「人貝奇談」(「平成元年発行 少女フレンド3月10日号増刊 サスペンス&ホラー特集号」所載)
「ある大学の女子寮にて、寿和子は、堕胎手術をしてくれる医者を紹介してくれるという噂があった。
友梨は友人の亜矢にその噂を確かめてくれるよう頼まれる。
亜矢は避妊に失敗して、できちゃっていたのだ。
寿和子によると、親戚が産婦人科医をやっているとのことで、ちょうど帰省するので、亜矢を連れて行こうと言う。
手術は成功したものの、体調を崩した亜矢を心配した友梨は、寿和子の実家が経営するペンションを訪れる。
ペンションは寿和子の一族が経営しているというが、友梨はどこか奇妙な印象を受ける。
その夜、亜矢が行方不明となり、友梨は恋人の貴洋を呼び出す。
一度は地中に埋められていた亜矢の死体を見つけるものの、警察官を呼んだ時には死体は消えていた。
そして、友梨と貴洋は、寿和子の一族の秘密を知ることとなる…」
・「霊薬抄」(「平成元年発行 少女フレンド8月15日号増刊 サスペンス&ホラー特集号」所載)
「芦森美帆はミスコンテストで優勝した過去のある人妻。
金持ちの夫に、高校三年の長男、圭吾と高校二年の由花に恵まれ、一見幸せそうに見えるが、実際は日々衰える容貌に戦々恐々としていた。
美帆は同窓会に出席した時、ある友人が不老長寿の薬を手に入れたという話を聞く。
その薬は、胎児や産まれたばかりの赤ん坊から採られたエキスでつくられたものらしいが、他にもいわくがあった。
この薬を持っているだけで、様々な怪奇現象が起き、少女の霊が現れるのだと言う。
が、「不老」の肩書きだけで、夫の反対を押し切って、美帆はその薬を買う。
その夜、由花が寝ていると、少女の霊が彼女の前に現れる。
少女の霊を知っているはずがないのに、懐かしさを感じる由花。
そして、この薬がもとで、絡み合った過去の因縁がほどけ、驚くべき真相が明らかになっていく…」
「人貝奇談」「霊薬抄」と「胎児を使って、不老長寿の薬」の話が二話も入っております。
どちらもなかなかの力作ですが、ほろりとさせられる「霊薬抄」が個人的には好みです。
平成27年5月12・13日 ページ作成・執筆