志賀公江「エリザは緋と燃えた」(1986年8月14日第一刷発行)
収録作品
・「エリザは緋と燃えた」
「1977年10月。
警視庁特別狙撃隊員、頼方巽(よりかた・たつみ)は、来日中のF1レーサー、レディ・エリザベス・レックスフォード(19歳)の身辺護衛を命じられる。
レディ・エリザベスの父親は、英国近代レース界の育ての親、サー・ウィリアム・レックスフォードであったが、昨年、レース中に事故死して、彼女が家督を継いでいた。
だが、彼女は二人の姉とは違い、二号の子であり、姉達から命を狙われる。
そして、母親はフランス人と公式には発表されていたが、頼方は、真実を知っていた。
十五年前の横須賀、彼の隣家に、幼い彼女と日本人の母親が越してくる。
彼は、いじめにあう彼女を守り、それが自分の義務だと考えるようになる。
しかし、彼が学校に行っている間、彼女の父親が彼女を迎えにやって来て、エリザベスは、緋色のバラを一本残し、彼の前から消えたのであった。
そして、今、彼女の過去を知る人物が次々と殺されていく。
暗殺者は誰…?」
・「十五年目の利子」
「時子の家庭は、姉の町子による横領発覚により、崩壊する。
父親は既になく、一家は家を売り払って、二百万を返済。
更に、姉は、子宮外妊娠により、子供は亡くなり、自身も出血多量のため、危篤となる。
時子は、姉が付き合っていた、若い男のことを尋ねるが、姉は「どうかあの人には知らせない」よう、また、「幸せだったの…生まれてはじめて男の人を愛して…」云々と言い残して、この世を去る。
母も心労がたたって、間もなく亡くなり、時子は、名字を変え、おじ夫婦の養女となる。
大学卒業後、彼女は東和銀行に入社するが、それにはある目的があった。
それは、梶という男性で、姉の元・恋人、そして、姉を死に追いやり、一家を不幸のどん底に陥れた張本人。
だが、実際の梶は真面目な仕事人間で、片親のハンディキャップを乗り越えて来た苦労人であった。
彼は時子に想いを寄せるが、彼女は、彼に惹かれながらも、「兄」としか見れないと、はねつける。
そして、時子が彼を見つめ続けて、十五年後…」
・「恋人たちの岬」
「大学生の未央(18歳)は、汐入コンツェルンを受け継ぐ身。
父親の遺言では、二十歳で、次期重役候補の男性と結婚しなければならなかった。
後見人のおじ夫婦は、自分の息子、上大岡六郎を彼女の監視役につけ、未央と結ばれるよう画策する。
だが、未央は、学問一筋の文学助教授、金沢(27歳)に想いを寄せる。
彼には「さぎり」という、若い頃、愛し合った娘の幽霊が憑いていて、付き合う女性は祟りを受けるという噂があった。
しかし、未央は、彼の研究室に山茶花の花を供えたことがきっかけとなり、金沢と付き合うようになる。
未央と金沢との仲は深まるが、そのためにいろいろと事態は紛糾、遂には、殺人事件が起きる。
未央は、故郷(静岡県大崎郡)に帰った金沢を追い、二人で、さぎりの墓の前に立つのだが…」
三編とも、ホラーではなく、サスペンス・ミステリーです。
ただ、「恋人たちの岬」はラスト、幽霊が出ております。
・備考
本体、上端に、何かにぶつけたような折れあり。
2020年10月4・5日 ページ作成・執筆